身近なノウハウに加え、こうした哲学を説く本書は現役の広報担当者にどう読まれているか。店舗勤務から広報へ着任した際に旧版で学んだという大手飲食チェーンの広報ウーマンは、こう話す。

広報はこんなに凄い仕事だ

「メディアとの付き合い方やリリースの工夫についての記述もあり、実践的でとても役立ちました。ただ、本文には『広報はこんなに凄い仕事だ』とエールを送ってくれる部分もあるのですが、そこは割り引いて読むようにしています。広報は成果が目に見え、上司や同僚にも知ってもらえる恵まれた職種です。それだけに、謙虚さを心掛けなければいけないと思っています」

山見博康『新版 広報・PRの基本』(日本実業出版社)
山見博康『新版 広報・PRの基本』(日本実業出版社)

会社の中には、辛辣な客にも対応しなければならない消費者相談窓口の担当者もいれば、従業員の給与や福利厚生の実務を担当する人もいる。この人たちがいてこそ企業活動は回っていく。また、著者も指摘するように「各部署の実力者は必ずしも肩書通りではない」。本書を誤読し、広報担当者が肩で風を切っているようではいけないのだ。

一冊を通して伝わってくるのは「どの部署にいても周囲から頼りにされる存在になれ」というメッセージだ。著者自身は「有能でなくても有用であれ」と表現する。その心得があれば、ビジネス人としての「現役寿命」が延び、人間性も磨かれるだろう。

山見博康
広報・危機対応コンサルタント
「山見塾」塾長。1945年生まれ。九州大学卒業後、神戸製鋼所へ。広報部長などを経て2002年に独立。第一線で後進の指導に当たる。
(撮影=遠藤素子)
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