私は上司から振られた問題について、いつでも2時間集中して考え、必ず2時間で答えをアウトプットするよう自分に課していました。当日の夕方までには必ずレポートを書いて提出する。クイックレスポンスです。いわばバッティングセンターのように、堤さんが次々投げ込んでくる剛速球を、とにかく必死に打ち返すのです。ファウルでも当たり損ないのチップでもいい。打ち返すことが大事なのです。見送りや空振りは駄目。

2時間と区切ったのは、それ以上いくら時間をかけても、2時間で考えた範囲を超えるアイデアは出てこないと、経験上、悟ったからでした。

こういった訓練を連日積み重ねたことで、私の頭の中には、必ずアイデアが浮かんでくるという一種のクセ、道筋が形成されたと思います。答えが約束されているという感覚を持てるようになりました。今でも、課題に向き合ったとき、集中して考えれば必ずいいアイデアが生まれるはずだという楽観的な自信が湧いてきます。

目の前の課題には、このように集中力で対処してきました。人間の頭脳は、仕事をしながらでも今日の夕飯は何を食べようかなどと別のことをいくつも考えることができるもの。それだけ高い能力が備わっています。その、複数のことを同時に考えられる能力を、2時間の間、たった一つの課題に完全集中させたのです。

とはいえ、毎日の仕事としてのルーティンワークは「面白くない」と感じがちです。集中力を発揮できないことも少なくないでしょう。そういう場合でも、工夫の仕方次第で、仕事はいくらでも面白くなります。仕事を「ゲーム化」すればいいのです。

たとえば、同僚と、どっちが先に帳簿の記入が終わるかスピードを競い合う。あるいは自分一人で、時間の目標を立てて、それにチャレンジする。今日は自己記録更新だと、ひそかに喜ぶのもいいでしょう。ゲームの要素を入れることで、つまらないと思っていた時間もアッという間に過ぎてしまうはずです。しかも、仕事の処理能力も知らず知らず向上するに違いありません。

相対性理論はアインシュタインで知られていますが、私は「時間の相対性理論」を唱えています。嫌々やる仕事の時間はなかなか進まず、デートや遊びの時間はたちまち過ぎてしまうということ。人生で最も大事なのは、「時間が短い」と感じられる時間を、どれだけ多く持てるかだと思っています。そして、時間は、工夫次第で楽しく短いものに変えることもできるのです。

(小山唯史=構成 的野弘路=撮影)