2020年4月現在、世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス。当初、中国の武漢地区で発生が報じられた時は多くの国々にとって「対岸の火事」だったが、交通のグローバル化によって瞬く間に各国に飛び火した。日本でも感染者が増え続け、終息の見通しは立っていない。医療の専門家はこのウイルスをどう見ているのか。iPS細胞による目の難病治療の世界的第一人者として知られる医師で医学博士の高橋政代氏に見解を聞いた。
医学コミュニティで共有されている認識とは
神戸港沖の人工島、ポートアイランドに2年前に設立された神戸アイセンター。そこで現在、難治性の目の疾患を、iPS細胞を培養した細胞シートによって根治させる研究と普及に取り組むのが医療系ベンチャーのビジョンケアだ。昨年、理化学研究所から同社の代表取締役に転じた高橋氏は「周囲の医学コミュニティでおおよそ共有されている認識をお話ししたい」と切り出した。
「私は感染症を専門とする研究者ではありませんが、眼科でもウイルス性の重症結膜炎が院内感染することがあり、病棟責任者時代には感染予防には多大な注意を払いましたので、新型コロナのパンデミックにも大きな関心を持ち、情報収集を続けています。その観点から見ると、これまでの日本のコロナ対策は、専門家会議を中心に医療的な面では現段階のベストを尽くしてきたと感じます」
各国のコロナ対策において何より重要なのは、患者数の増加によって人工心肺をはじめとする医療機器の数が不足し、医師や看護師の治療が及ばなくなる医療崩壊を起こさないことだと高橋氏は語る。実際、増え続ける患者に医療が対応できなくなったイタリアでは4月1日現在で1万2418人、スペインでは8189人もの感染者が亡くなり、遺体が病院の廊下にしばらく放置されるという事態まで起こった。それに比べて日本は、3月31日時点で感染者1887人に対し重症者59人、死亡者56人と低い数値にとどまっており、医療崩壊を免れている。