「10の原則」が私を助けてくれた

この本には、私の経験がほぼ時系列で描かれている。ABCで働きはじめた日から、私は14人の上司のもとで20の仕事を経験した。組織の最底辺で昼メロの雑用係もやったし、ネットワーク局の経営者として時代の先端を行くような番組も生み出した(業界の歴史に残るような大コケもした)。働いていた会社が二度も買収されるき目にあったものの、経営者として何度か企業を買収する立場にも立った。ピクサー、マーベル、ルーカスフィルム、そして直近では21世紀フォックスが私たちの傘下に入った。

私はスティーブ・ジョブズと共にエンターテインメントの未来について構想を練り、ジョージ・ルーカスが築いたスター・ウォーズの神話を語り継ぐ役目を負うことになった。メディアを創造し、伝え、楽しむ方法がテクノロジーによってどのように変わっていくのか、また今どきのファンに感動を与えながらも100年近く続いてきたブランドに忠実であり続けるにはどうしたらいいかを、毎日のように考えてきた。そして、ディズニーというブランドと世界中の数十億の人々とをつなぐため、懸命に真剣に働いてきた。

そのすべてが終わりに近づいた今、私が学んだことを振り返ってみると、真のリーダーシップに必要な10の原則が浮かび上がってくる。私を助けてくれたこれらの原則が、読者のみなさんの役に立つことを願っている。

優れたリーダーは「悲観的」にならない

1.前向きであること

優れたリーダーに共通する大切な特徴のひとつは、前向きさ、つまり熱意を持って高い目標に取り組むことができるということだ。難しい選択を迫られた時や、理想的な結果が出ない時でも、前向きなリーダーはただ悲観ばかりにとらわれることはない。悲観的なリーダーは人々をやる気にさせることも、チームを活気づけることもできない。

2.勇気を持つこと

勇気がなければリスクは取れない。変化と競争の激しい業界では、リスクテイクは必須であり、イノベーションは欠かせない。そして真のイノベーションは、人々が勇気を持った時にはじめて生み出される。買収にも、投資にも、資本配分にも勇気が必要だし、クリエイティブな判断では特にそうだ。失敗を恐れると、創造性は破壊される。

3.集中すること

最も重要で価値の高い戦略や問題やプロジェクトに、時間と労力とリソースを注ぎ込むことは極めて大切だ。またその優先順位をはっきりと頻繁に周囲に伝えることが欠かせない。

4.決断すること

どれほど難しい決断であっても、必要以上に遅らせてはいけない。リーダーは多様な意見を尊重しながらも、タイムリーに決断を下し実行する必要がある。リーダーが優柔不断だと、仕事が進まず何も生み出せなくなってしまうばかりか、チームのやる気が失われてしまう。