ツタヤ川崎駅前店は渋谷、新宿店と並び、売り上げが全国でトップスリーに入る。営業時間が朝の10時から深夜2時までと長いので、正社員5人、アルバイト、パート63人のスタッフはシフトを組んで働いている。
「おはようございます」と店長の原貴志さんがあいさつすると、すぐにDVD、CD、ゲームソフトのそれぞれの前日売り上げ数字、それから目標数字を各担当が発表する。次いで、原店長が「その日にいちばん需要が殺到するDVD・CD」のタイトルを読みあげていく。出席者は、メモ帳を片手に真剣に聞き入り、ペンを動かしていく。私語は一切ない。全員が商品やキャンペーンの情報を聞き取ることに集中している。
原店長は「朝礼の場で何でも伝えるようにしています」と語る。
「お客さまから、たとえば『トイ・ストーリー』の1と2はどこにあるの? と聞かれたら、誰もがすぐに、はい、あちらですと答えなくてはなりません」
原店長は朝礼のたびに同じ内容の説明を繰り返す。出席者がちゃんと書きとるまで、微笑を浮かべながらじっと待つ。彼は若い学生アルバイトに対しても居丈高な態度を取ることはない。誰に対しても、さん付けで呼ぶ。
それにしても、同じ内容のブリーフィングを1日に2度も3度もやることを面倒だな、とは感じないのだろうか。
「数字や商品の説明を印刷物にして配ることもできます。しかし、それでは気持ちは通じません。みんなを前にして話をするから聞いてくれるのです」
ツタヤの従業員は正社員、パート、アルバイトの区別なく、全員が日々売り上げ目標達成のために働いている。朝礼を5回もやり、そのたびに丁寧に店長が説明することは従業員の意欲を向上させることにつながる。私がこの朝礼で学んだことは、一緒に働く仲間に対しては丁寧な言葉で語りかけること、手間を惜しまないことのふたつだ。