年金方式は他の公的年金等収入と合算して税額を計算する

では、退職金を分割の年金で受け取った場合はどうなるのか。

一般的に年金は、「雑所得」という所得の種類に分類される。ただし、退職年金が「公的年金等」に該当する場合は、税控除を受けることができる。控除額を超えた分が「雑所得」として課税される。

たとえば、2000万円の退職金全額を、10年で分割して受け取る場合で考えてみよう。条件として、年金の運用分が210万円(運用率2%で計算)、公的年金の収入金額が年350万円、年金以外に収入はなく、所得控除は社会保険料が60万円と基礎控除48万円のみ、復興特別所得税は加味しないことにする。

この場合、10年間、毎年21万1350円を税金として納めることになる。

一方、一時金の場合、課税対象は公的年金だけなので、毎年6万3500円を収めることになる。1年で14万7850円、10年で140万7850円の差になる。退職金を一時金でもらった場合の所得税2552円を差し引いても、147万5948円の差だ。

国民健康保険税も高くなる

それだけではない。住民税も高くなる。その差は1年間あたり、30万8850円-12万7000円=18万1850円。10年間だと181万8500円。退職金を一時金でもらった場合の住民税5000円を差し引いても、その差は181万3500円にものぼる。

さらに、国民健康保険税は前年の所得金額によって変わってくる。市区町村によって計算方法が変わるが、退職年金によって、納める金額が1年間で6万円増えたと仮定すると、10年で60万円の差となる。

退職金を年金でもらう場合、雑所得に該当するので、雑所得が増えた分だけ、国民健康保険税も高くなるのだ。

所得税、住民税、国民健康保険税の10年分の差を合わせると388万9448円となる。

退職金を一時金として受け取るか、年金で受け取るかを考える際、所得税・住民税だけではなく、国民健康保険税も考慮に入れて選択しなければならないというわけだ。