なんでもやるヤンチャなやつを探していた
この「太陽にほえろ!」は、若い新人刑事を登場させ、彼の成長物語を描いていくことを縦軸とするドラマである。だから、新人刑事は企画上の主演である。この役の若者を誰にするか、悩みに悩んだ。
企画書を書いた時点では、警察学校出立ての規則一辺倒の刑事が、仕事をしていくうちにまわりのベテラン刑事に感化され、融通の利く一人前の刑事になっていく、という成長物語であった。アメリカ映画ではよくあった人物像だったが、脚本家の小川英は違う意見だった。
「それじゃつまらない。若者なんだから、飛び跳ねたい。若さにまかせて、自分の感情のおもむくままデタラメをやってしまう。やっぱり、思いっ切り暴れてもらわないと面白くならない。そんな新米刑事が、自分を抑えることのできる一人前の刑事へと成長するまでの話にしたい」
彼の主張には、説得力がある。なるほどと思い、私も考えを変えた。なんでもやるような、ちょっとヤンチャなやつがいい。しかも、自分に誇りを持っていて、一生懸命にやる人だ。普通ならばブレーキをかけてしまうようなことでも、自分が納得するまでとことんやってしまう、そういう人じゃないとうまくいかない。そう思った。
萩原健一に会えたのはまさに僥倖だった
ところが、当時よく起用していた俳優座や文学座の出身者にはあまり弾けた俳優がいなかった。まして、反骨精神を持った者などいない。芝居ができても、それでは役のイメージとは違いすぎる。ほとほと困っている時に、渡辺プロダクションのマネージャーから提案があった。
「うちの萩原健一はどうですか?」
萩原健一は、渡辺プロダクションに所属していて、グループサウンズの人気者であったが、最近ドラマ出演に非常に興味を持っているという。これは願ったり叶ったりだった。念のために、東宝の梅浦プロデューサーと共に彼の出演している『約束』(1972)という映画を見に行った。そこに登場するショーケンは、我々が考えていた主人公の若手刑事そのものだった。