相続税の負担における違い

内縁の妻と戸籍上の妻との違いは、相続税の負担においても出てきます。

戸籍上の配偶者は、「配偶者の税額軽減」を使うことによって、相続税を支払うことはあまりありません。「配偶者の税額軽減」とは、配偶者が取得した財産額が法定相続分か1億6,000万円か、いずれか多い金額まで配偶者には相続税をかけない、という大特例です。また、故人の自宅を配偶者が取得する場合には、小規模宅地等の特例という大きな減額制度も認められます。

かたや内縁の妻は、故人の遺言によって何がしかの財産を取得した場合には、相続税が2割増しになる「2割加算」という制度の対象となりますし、故人の自宅を取得した場合には、被相続人の親族でもありませんので、小規模宅地等の特例も適用できませんから、配偶者と比べ大変大きな相続税を負担することとなります。

口頭で言っただけではなんの法的効果もない

ところで、入籍当初、文恵さんが宣言した「相続放棄」。これは、記者会見などで公言しただけでは何の効果もありません。相続を放棄するには、相続開始から3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する必要があるのです。

相続を放棄すると、初めから相続人でなかったものとみなされるため、思わぬ財産が出てきてももう相続することはできません。相続放棄とは、そうした法的効果を生ずる行為です。

文恵さんは、こうした手続きをせず、単に「遺産は受け取らないわ」と言っただけにすぎないため、翻すことができたというわけです。

遺言も同じです。「みんなにずっと言い聞かせてあるから大丈夫」という方がいますが、何一つ大丈夫ではありません。

放棄にしても遺言にしても、口で言っただけでは、何の法的効果もありません。複雑な家族関係である場合は特に、法的に有効な遺言書をのこすことが、トラブル回避の最高の対策となります。

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