新型コロナウイルスの流行をうけ、江戸時代に熊本に現れたという妖怪アマビエをはじめ、疫病に関わる寺社や伝承が話題になっている。宗教社会学者の岡本亮輔氏は「日本の各地には疫病除けにまつわる伝承が受け継がれている。それは私たちの社会が最終的に疫病を乗り越えてきた証拠だ」という――。
素戔嗚神社 天王祭
写真=AP/アフロ
素戔嗚神社 天王祭=2016年6月4日

「新型コロナウイルス感染症流行鎮静祈願祭執行の件」

新型コロナウイルスの流行をうけ、江戸時代に熊本に現れたという妖怪アマビエをはじめ、疫病に関わる寺社や伝承が話題になっている。3月4日には、全国の多くの神社を包括する神社本庁が「新型コロナウイルス感染症流行鎮静祈願祭執行の件」という通知を出し、各地の神社で新型コロナ鎮静祈願の神事が行われている。

都農つの神社のある宮崎県では、2010年に口蹄疫が発生し、29万頭以上の家畜の命が奪われた。その惨禍を念頭に起きつつ、2月18日以来、同社では毎朝新型コロナ終息が祈願されている。京都市の上賀茂神社でも、3月3日の桃花神事の際に合わせて祈願が行われた。

同じく京都市の八坂神社や埼玉県の秩父神社では、通常は夏に置かれるの輪が登場している。八坂神社は、創建時から疫病と深い関わりがあると伝えられる。伝承では、9世紀に流行した疫病を鎮めたことで知られるようになったという。同社が祭神とするのが素戔嗚尊すさのをのみことであり、境内にはえき神社も祀られている。