最近の日本史の教科書を開くと、教わってきたことと随分違うことに気づく。知らぬ間に何があったのか。歴史家の河合敦氏に詳しく聞いた――。

【縄文時代】科学の発展で、年代に変化

早速ですが、皆さんは縄文時代が何年前から始まったと教わりましたか? 40代以上の方は1万年前と習った方が多いと思いますが、様々な研究の結果、現在の教科書では1万3000年前とされています。

奈良県桜井市の纒向遺跡。発掘調査が進むにつれ、卑弥呼時代の大型建物の遺構や遺物が次々と発見された。
奈良県桜井市の纒向遺跡。発掘調査が進むにつれ、卑弥呼時代の大型建物の遺構や遺物が次々と発見された。(AFLO=写真)

しかし、さらなる科学技術の発展が、歴史を塗り替える可能性があります。炭素14年代測定法を用いて青森県にある大平山元I遺跡の縄文土器を測定したところ、1万6500年前という驚きの数字が出ました。この測定法の結果が正しいとすると、縄文文化は、今の教科書より3500年も早い、日本が中国大陸と陸続きだったときから始まっていたことになります。

炭素14年代測定法とは、どのようなものなのでしょうか。生物は体の中に放射性炭素を含んでいます。ところが死ぬと、それが一定の割合で減っていきます。半減期は5730年です。つまり、どれだけ放射性炭素が減ったかを測ることで、経過年数が計算できるのです。

さらに縄文文化は狩猟採取、弥生文化は水稲農耕を基礎とすることになっていますが、近年の研究により、縄文時代晩期には確実に稲作(水稲耕作)が始まっていたというのが定説になっています。