基本的に死ぬまで自宅を無償で使用できます

2020年4月以降の相続では、自宅を「居住権」と「所有権」に分けることができるようになりました。居住権は「権利を第三者に譲渡したり、勝手に自宅を第三者に使用させたりしてはいけない」といった制約がつきます。居住権には、配偶者短期居住権(遺産分割等が決まるまで最低半年は自宅を無償で使用できる権利)および配偶者居住権(遺言か遺産分割協議で設定される権利)があります。質問者は夫の自宅に1度居住権が登記されれば基本的に死ぬまで自宅を無償で使用できます。

この法改正は、遺された家族の生活費に関する不安も大きくやわらげることになると考えられています。

質問者の場合は相続する預貯金が500万円でしたが、わかりやすくするために、預貯金が1500万円だった場合で考えましょう(図版参照)。改正前なら、後妻が1500万円の自宅をもらったのであれば、前妻の子どもが1500万円を受け取るので、高齢な後妻が生活に困る可能性がありました。法改正後は、自宅を居住権と所有権に分けて相続できるようになり、後妻が自宅の居住権(750万円)、先妻の子が自宅の所有権(750万円)を授かったとします。この場合だと、預貯金の相続も後妻は受け取る権利があり、後妻は自宅に住みながら生活費も以前より確保できるようになります。

後妻も自宅に居住する権利が創設された!
2.介護でハードワーク。相続の際、認めてもらえないのですか

Q 同居する義母を7年間、ほぼ私だけで介護してきました。その義母が先週亡くなりました。義母の息子である私の夫は数年前に他界しており、私に対する相続を記載した遺言書はありません。私も遺産を分け与えてもらえますか。

A 可能性はありますが、期待した額にはならないでしょう。息子の嫁には相続の権利はなく、介護をしていても、法改正前は例外的なケースを除き、亡くなった義母の遺産をもらうことはとても難しかったのです。

今回の改正は義理の親の介護などで苦労している人が多い現状をふまえたもので、19年7月以降に死亡する形で相続が開始した場合には「特別の寄与」制度に基づき、介護など特別寄与料の支払い請求ができます。亡くなった人に対して無償で療養看護や介護などを提供をした人などが請求可能です。

この制度のチェックポイントは、(A)特別寄与者が被相続人の民法上の親族であること、(B)無償で療養看護やその他の労務を提供したこと、(C)被相続人の財産を維持または増加できたこと、といったところです。特別寄与料の算定は今後の運用次第であり、平成時代に10年以上介護したことに対し200万円程度のみ認めた過去の判例と比べれば受け取れる金額は上がると思われますが、普通に働いた以上の金額が認められることはなかなかないのではと予想されます。