卵アレルギーでもワクチンは接種できる
──先生のアレルギー外来でも、ワクチン接種に否定的な方はいるのでしょうか。
【堀向】卵アレルギーがあるので「ワクチンを打ってはダメだと言われていました」という親御さんは結構おられます。これは正しい知識を伝えていない医療者側も問題で、黄熱ワクチンなどの一部のワクチンを除き、多くの場合は卵アレルギーがあるからといってワクチンを打てないことはありません。
例えば、製造工程で卵が使われているワクチンのなかで、卵タンパク量が一番多いのはインフルエンザワクチンですが、ワクチン内に含まれる量は1ccあたり、1ng(ナノグラム)なんですよ。1gの1000分の1が1mg、その1mgの1000分の1が1µg(マイクログラム)、そのまた1000分の1が1ngです。3歳未満のお子さんへの投与量は0.25ccですから、さらに4分の1になるわけですね。その量で卵アレルギーの症状がでる人は、基本的にほぼいません。
──そんなに少ないんですか!
ハウスダストに含まれる「卵タンパク」の方が多い
【堀向】そうなんですよ。実は卵のタンパク質ってハウスダストのなかにも含まれていて、その量がワクチンに含まれる量よりもはるかに多いことがわかっています。環境省の研究費で行われている「エコチル調査」の事前研究に参加してくれたご家庭で、お子さんのベッドのシーツの表面を掃除機で吸い取り、ホコリのなかの卵タンパク量を測定したんですね(※文献8)。
文献8:Kitazawa H, et al. Egg antigen was more abundant than mite antigen in children's bedding: Findings of the pilot study of the Japan Environment and Children's Study (JECS). Allergol Int 2019; 68:391-3.
そうすると、全てのご家庭のホコリの中から卵タンパクが検出されたほか、ホコリ1g中に60µg以上の卵タンパクが含まれているご家庭のほうが多かったのです(中央値43.7µg/g)。インフルエンザワクチンに含まれている卵タンパク量の6万倍以上です。普段、そのなかで暮らしているのですから、ワクチンの卵タンパクにはまず反応しません。もちろん、卵以外の食物アレルギーがあるお子さんも、ふつうのお子さんと同じようにワクチンを打つことができます。