アサヒが販売量の公表を取りやめ「常識を変革する」

近年、わが国のビール各社は、生き残りへの危機感を強めさまざまな改革に取り組んできた。キリンHDは事業の多角化やプライベートブランド(PB)商品の提供などに取り組んでいる。一方、アサヒHDは自社のブランド競争力の強化や海外進出に注力している。

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写真=iStock.com/kazuma seki
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こうした厳しい生き残り戦略の結果、市場シェアの集計に関する見解の相違が鮮明化した。そのため、ビール業界全体の動向データの作成基準が変更され、ビール酒造組合が公表していた出荷データの公表頻度は月次から四半期に、さらには半期ごとに変えられることになった。

2020年からアサヒは販売量の公表を止める。この発表には2つの重要な意味がある。1つ目は、アサヒがデータの公表を停止することによって、各社のシェア把握など業界動向の分析が困難になる。それは市場参加者などにとって大きな問題だ。

2つ目として、アサヒは数量を重視したこれまでの価値観に加え、収益性や効率性を重視した発想を組織に浸透させたいのだろう。それは、国際競争に対応するために重要な取り組みの1つといえる。アサヒは数量に関するデータの公表停止という思い切った措置をとることで、自社の“常識”を変革しようとしているといってもよい。その背景にある要因を考え、わが国のビール企業に求められる取り組みを考えてみたい。