本当は「一日中テレビを見ている子供」はいなかった

依存性が格段に増したのはゲームだけではありません。

インターネットのない時代からメディア(情報媒体)はたくさんありました。テレビやラジオ、新聞、雑誌、本、手紙、電話、ビデオ、映画、交換日記など多種多様なものです。

しかし、これらのメディアは制約が多いものでした。

たとえば、家で“一日中テレビばかり見ている子ども”は以前から社会問題でした。

ですが、子どもの興味のある番組は、一日のうちせいぜい数時間程度しかなかったでしょう。そもそも昭和の時代では、テレビは一家に一台の家庭が多く、子どもたちが見たい番組をいくらでも好きなように見られる環境にはありませんでした。つまり、“一日中”は文字通りの意味ではなく、あくまでも表現的な意味合いだったのです。

手紙も同様です。毎日、手紙を書く。一日中、手紙を書く。このような表現も、実際には手紙が相手に届くまでにはある程度の時間がかかり、返信されるまでにもそれなりの時間が必要です。要するに、一日中ひっきりなしにやりとりすることは不可能でした。

いつでもどこでも快楽を得られる「スマホ」という存在

これらの点が、インターネットは異なります。

中山秀紀『スマホ依存から脳を守る』(朝日新書)
中山秀紀『スマホ依存から脳を守る』(朝日新書)

既存のメディアから進化したインターネットは、大量の情報を瞬時に相互に送ることができるため、時間の様相を変えてしまいました。既存メディアの欠点のほとんどを補っているといわれるほど、「双方向」しかも「個別」に「同時に」機能します。それゆえ、やりだしたらきりがない「依存的性質」を備えるメディアになりました。「使用中止」の判断はあくまでも自分の手、自制心にゆだねられているメディアなのです。

こうした依存的使用に関する報告が最も多いのはゲームのようですが、SNSや動画、メッセージアプリ(LINEなど)、掲示板、情報サイトなどの依存的使用もあります。そして買い物依存症やギャンブル依存症も、インターネットが介在することによって(オンラインショッピングやギャンブル要素のあるアイテム課金など)、その様態を急速に変えています。

しかもそれらすべてを「携帯可能」にし、いつでもどこでも「手軽」に、「快楽」を「飽きにくい」性質のあるインターネットコンテンツで利用可能にしたのが、現在最強の依存物の一つであるスマホなのです。

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