未だに人間が克服できていない「敵」である

規制」によって、依存物の入手コストは必然的に上がります。非正規の手段による製造・流通コストが上乗せされるためです。社会的、道徳的な抑止力とこうしたコスト変動が一定の抑止効果をあげることが多いのですが、残念ながら完全なものではありません。そして規制や罰則自体が依存物の使用に貢献してしまう側面もあるのは先述の通りです。結局撲滅には至らず、油断するとすぐに依存物・依存症による問題が「再拡大」します。

さて、人類には克服できていない病気や事故が存在します。その中でも依存物は石コロのように動かないので侮られがちです。しかし古代から現在まで死闘を繰り広げても克服できていない、人類最強(凶)の敵の一つだとみなして間違いありません。そして近年スマホなどを介したインターネットコンテンツ、オンラインゲームが依存物の列に加わり、さらに人々を脅かしつつあるのです。

初期のゲームは依存症とは無関係だった

スマホ、インターネット依存症で最も依存的使用の報告が多い、ゲームの歴史的経過を見ていきましょう。

「ゲーム」というとボードゲームや屋外でのスポーツなど様々なものを包括しますが、ここでは電子ゲームのことについて述べます。

歴史上でゲームマシンの最古の例として挙げられるのが、スペインの発明家レオナルド・トーレス・ケベードが1912年に完成させた、チェスの最終局面をプレイできる電気式の「エル・アヘドレシスタ」(スペイン語で、チェスプレイヤーの意)です。これは、計算機を利用して作られた最初のゲームです。電気式のアームで白のルークとキングを扱い、対戦する人間が黒のキングを盤面のどこに置いても、電気センサーでその位置を感知して詰ませられる装置であったとされています。

この事例はゲームの「発見」に相当するでしょう。

その後、欧米を中心とした計算機やコンピューターの発展に伴いゲームは次第に「性能強化」を重ねますが、当時のゲームは研究者などごく一部の人のみが使用でき、またその性能の低さから、依存症とはほとんど無関係であったと考えられます。ただしきっと「面白い」「楽しい」と思ったに違いありません。当時のゲーム使用者の気持ちはわかりませんが、このことは「効用の発見」に相当するかもしれません。

米国のノーラン・ブッシュネルは一人遊び用の宇宙シューティングゲームを開発し、その試作機を1971年に完成させます。これをナッチング・アソシエーツ社に売り込み、同社から「Computer Space」と名付けられた史上初の業務用ビデオゲーム機が製造されます(ただしこのゲームはあまり売れなかったようです)。