タテ軸は販売冊数(割合)、ヨコ軸は順位を表す。販売冊数(割合)とは販売冊数を、書籍全体の販売冊数で割った数字。(左)は結果を目盛りの間隔が等差的な「線形グラフ」。(右)はタテ、ヨコ軸とも対数目盛りを取った「両対数グラフ」。
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タテ軸は販売冊数(割合)、ヨコ軸は順位を表す。販売冊数(割合)とは販売冊数を、書籍全体の販売冊数で割った数字。(左)は結果を目盛りの間隔が等差的な「線形グラフ」。(右)はタテ、ヨコ軸とも対数目盛りを取った「両対数グラフ」。

さて、そこで図1(左)のグラフを読む。上位にランクされた本は、販売冊数もダントツに多い。ただし、ダントツに多いのは上位の一部にすぎないことが、タテ軸にべったりと張り付いた線からわかる。そして、それ以外のほとんどがさっぱり売れていないことは、ヨコ軸に張り付くように伸びた線から理解できる。

しかしこのグラフでは“ダントツ”と“その他”は雲泥の差であり、比較することが難しい。“その他”にしても、ヨコ軸に張り付いたドングリの背くらべになっているので、違いの分析をしようがない。そこでちょっと細工をする。

まず図1(左)のグラフはヨコ軸「x」の値が増加すると、タテ軸「y」の値がx乗で減少するという「y=ax」の性質をもっている。xとyのこの関係を、べき乗分布という。

べき乗分布は、ふつうのグラフ用紙(線形グラフ)に描き込むと、ドングリの背くらべと雲泥の差が混在するので、わかりにくい。そこで「両対数グラフ」に置き換えてやると、図1(右)のようになる。対数と対数グラフについては後述するので、まずは見ていただきたい。見事な傾斜をもった線グラフである。もはや“ものいわぬ”ドングリの背くらべでもなければ雲泥の差でもない。ふつうのグラフ用紙に示された「L字」のような線とは、比較にならないほど雄弁になっている。

これは実におもしろい。著者がいうように、普通のグラフでは「破格に売れているタイトルがごく稀にあり、ほとんど多くのタイトルはあまり売れていない」ことを示してはいるが、対数グラフでは「売れ行きの規模に関係なく、順位が下がれば販売量が規則正しく減少していくということ」が明確にわかる。言い換えれば、順位が下位の書籍でも、トータルではけっこうな販売冊数になるということである。

では、対数とは何か。高校の数学以来目にすることさえなかった人もいるだろう。平たくいうと、べき乗(累乗)の反対である。たとえば2の3乗は、「2×2×2=8」になる。逆に2を何乗したら8になるか、の答えは3である。そこでこれを、「3=log28」と表す。つまり「2の3乗は8」を「23=8」と記し、対数の「3は、2を8にする数(指数という)」を「3=log28」と表す。

(坂本道浩=撮影)