「かわいそうに、たいちゃんは雌の日本猫で、もう20歳なんです。足腰も弱っているので、歩くのもおぼつかないんです。一刻も早く見つけてあげなくちゃ」

ネコで20歳とは、人間で言うと100歳くらいという大変な高齢です。ずっと自宅で過ごしてきたというたいちゃんが外に出てからもう二晩以上経っていること、この寒さの中ではおそらく食べ物も得られていないことを考えると、体力的なリミットは刻々と迫っているでしょう。

遊具から専用ソファまでオーダーメイド

たいちゃんが暮らしていた場所を案内してもらうと、それは見たこともないほど立派なネコの部屋でした。そもそも邸宅全体で部屋数が多いのですが、そのうち2部屋が飼い猫専用になっているのです。

2階にある20畳ほどもあるスペースに、壁際を伝って天井へ登る遊具から、ネコが寝そべるソファーまで、オーダーメイドで作られたようです。その部屋からネコ用の階段を上がると、3階の寝室があります。1匹ずつベッドが置かれ、全員がその部屋で寝ているのです。

ネコ捜索の七つ道具

もちろんこのスペース以外の広い家の中も自由に出入りしながら、仲間のネコ達と暮らしていました。

空き巣が入ってきたときは、6匹そろって家にいましたが、たいちゃんだけが姿を消しました。おそらく知らない人間が入ってきた気配を感じ、他のネコたちはすぐに家のどこかへ身を隠したのでしょう。たいちゃんは逃げ遅れてしまい、すっかりおびえてしまったのかもしれません。空き巣が2階、3階へと上がっていくなか、たいちゃんは1階へ降り、窓から外へ逃げだしてしまったのだと考えられます。

ただ、20歳という年齢であれば、眼もぼやけてくるし、鼻もあまり利かないはずです。遠くまでは歩けないから、まだ近くにいるだろうと考えました。

ご自宅の周辺を歩いて捜索することにしました。

室内猫によくある「脱走パターン」とは

まず、割れた窓を背にして立ちます。ここを出たたいちゃんがどのように歩いたかを考えることが、捜索の第一歩です。室内で飼っているネコの場合は特に、身体の片側を建物につけるようにして、壁面に沿って移動する癖があります。すると身体の一方が必ず壁で守られる格好になります。これで安心感が持てるようなのです。

道路などを渡ると身体の両面を晒してしまうことになるため、横断を避けながら移動していきます。こうして歩き、縁の下や簡易物置きの下、マンションの1階ベランダ部分と地面のすき間、排水溝の中、茂みの中などを見つけて身を潜め、周りの状況を観察しているのです。