利益は出ているのに、お金がないばかりに倒産――不動産関連会社をはじめ、いわゆる“黒字倒産”する会社が増えている。金融機関の貸し渋りが一因だが、倒産の理由は資金ショートしかない。営業部門は倒産予備軍を察知すべく、取引先の与信管理を慎重に行わざるをえない。
黒字倒産という事態が生み出される背景には、P/Lなど従来の決算書の“あいまいさ”がある。あいまいさを生む代表選手が減価償却と売り掛け(買い掛け)だ。実際にはお金が動いていなくても、P/L上では「収益・費用」として計上されるため、数字上は業績がよくても現金がないという事態が生み出される。
「在庫」についてもP/L上では費用計上のズレが生まれる。先述したように、P/Lの「売上原価」を算出する際は、売れ残りの在庫分を差し引く。よって在庫分の支出は、その時点で費用にならず、在庫が売れて初めて売上原価という費用になる。在庫が積み上がっていく限り、見えない支出も積み上がり、倒産リスクが高まっていくというわけだ。
こうしたP/Lの限界を踏まえ、会社の実態を見る際に活用したいのがキャッシュフロー計算書(C/S)だ。基本の考え方は「収入-支出=純収入」。P/Lの支出・費用のズレをなくし、シンプルに会社にあるキャッシュを表す。
C/Sには、製造や販売など本業にかかわる営業CF、設備投資などに関わる投資CF、借り入れ・返済などに関わる財務CFがある。与信管理では、営業CFに注目しよう。営業CFがプラスで計上されていれば、まずは合格。本業でお金が入っている証拠だ。投資CFがマイナスなら、事業拡大のために積極的に投資しているとポジティブな判断も可能。だが、結果、投資効果が出ているかまで確認しなければ意味がない。
たとえば、図9のNOVAのC/Sを見ると、「投資CF-」で店舗展開を積極的に行っている。しかし、05年3月期で「営業CF-」に転じ、キャッシュも減少。投資が失敗に終わったことがわかる。一方で財務CFは+で増えており、借り入れが増加している。この数字を見れば、「危ない投資」だったことがわかる。
このように、C/Sで倒産リスクをかぎとることは可能だ。ポイントは過去3年分は推移を見ること。売掛金や棚卸し資産の増え方もチェックすれば、危険の予兆をよりリアルに察知できるはずだ。