いよいよ半年後に迫った東京オリンピック。世界大会の出場を目標に、期待の新星を育てようとする機関があった。その現場に密着して見えてきたものとは? 「プレジデント」(2019年2月14日号)の特集「オリンピック選手100人の最強メソッド『自分を変える』」より、記事の一部をお届けします――。
競技力だけでは世界で通用しない
バンッ……。バンッ……。
ライフルとピストルを構えた若者が標的をにらみ、引き金に指をかける。数十秒に1度、発射音が地下の練習場に響いた。各自が集中し、何時間も黙々と撃ち続けていく。
ここは日本オリンピック委員会がトップアスリートを育てる「JOCエリートアカデミー」だ。新年早々練習に励むのは、将来日本スポーツ界を背負って立つ金の卵たちである。
アカデミーの開校は2008年。修了生には、卓球の平野美宇、張本智和、そしてレスリングの向田真優らがいる。現在所属するのは、中学生から高校生までの33名。競技はレスリング、卓球、フェンシングなど7種目に及ぶ。将来、オリンピックなどの国際競技大会で活躍することが期待される彼らは、東京・北区にある味の素ナショナルトレーニングセンター内の宿舎「アスリートヴィレッジ」で共同生活を送り、日中は近隣の公立校に通い、放課後はトレーニングに励む毎日を送っている。