「『ど』がつくほど真剣に勝てると思っているのか?」

打たなければいけない、抑えなければいけない、守らなければいけない、という気持ちが先走って、選手たちの気持ちと身体を強張らせる。いつもなら有り得ないミスが起こり、それを挽回しようという力みが違うミスを引き起こす。対戦相手はこちらのミスを生かして、得点を重ねていく。

勝ちたいと思わない選手はいません。彼らはいつだって、ひたむきに勝利を目ざしている。それなのに連敗を喫してしまうのは、多くのケースにおいて一人ひとりの選手が抱く責任感が、線として結びつかなかったからと言うことができます。歯車が嚙み合わない、という表現も当てはまるかもしれません。そして何よりも、監督である私自身の能力が足りていないのです。

私自身は「明日こそは勝つ、必ず勝つ」と思ってスタジアムを去り、「今日こそは勝つ、絶対に勝つ」と思ってスタジアム入りします。試合後に選手とスタッフの笑顔を見たい、裏方さんの力添えに報いたい。そのために全力を尽くす、と自分を叱咤しながらユニフォームに着替えるのですが、不安が忍び寄ってくる自覚もありました。正直に告白すれば、塗炭の苦しみを味わっていました。

そんなときでした。野球の神様に問われている気がしたのです。

「真剣ではなく『ど』がつくほど真剣に、今日は勝てると思っているのか?」

「もちろんです」と私は心のなかで答えます。するとまた、野球の神様が聞いてくるのです。

「お前は本当に、本当に、勝てると思っているのか? 負けるかもしれないという恐れを、本当に抱いていないだろうな?」

「ど真剣に生きる」は稲盛和夫さんの言葉だった

野球の神様はなぜ、私の気持ちを繰り返し確認するのだろう?

「ど真剣に生きる」――苦しい時にいつも救われた本のなかにあった稲盛和夫さんの言葉が、心に浮かんできました。日本を代表する名経営者に、ほんの少しだけでも近づけないだろうか。でも、いまの私にはあまりにも遠い。

ベッドに横になっても睡眠は浅く、朝起きても言い知れぬ倦怠感に襲われる。それでも自分を奮い立たせているのに……自己弁護の思いが頭をもたげたところで、自らの至らなさに気づかされました。

ファイターズが負けるということは、私よりも相手チームの監督のほうが、一心不乱に野球に取り組んでいるのだ。自分の甘さが結果に出ているのだ。これまでの努力では足りないのだから、もっともっと自分にムチを打って頑張らなければいけない。

内向きになりがちな思考から抜け出すことができたのは、ずっと書き続けてきたノートのおかげでした。