欧州は高額請求の心配なし
公的医療保険制度がある日本では、診療報酬は公定価格であり一律です。しかも患者の自己負担額はそのうちの3割だけ。さらに高額療養費制度で自己負担額の上限が定められているため、毎月の支払いは多くても十数万円となっています。
しかしアメリカは違います。自由診療なので、医療費は病院が決めます。患者は契約内容に合意のうえ治療を受け、費用は全額支払わなければなりません。そこで発達しているのが民間の医療保険です。
しかし民間医療保険の保険料は安くないうえ、保険を利用すれば翌年の保険料が上がるので、病気にならないようサプリメントやフィットネスで予防するというのが中流以上の人たちの常識です。半面、アメリカは医療技術の先進国なので、費用さえ払えれば日本では受けられない最先端の治療が期待できます。
アメリカを訪れる場合は、こういう事情を把握したうえで、前もって補償が十分な海外旅行傷害保険に入っておくことをおすすめします。一般的なクレジットカードに付帯している保険は治療費の限度額が数百万円ですが、これだけでは不安です。心筋梗塞などのリスクが低い20代でも2000万円、高齢者や持病のある人は、5000万円くらいの補償はあったほうがいいと思います。海外渡航前に空港などで入る医療傷害保険で不足分を補うといった対策が必要でしょう。
ヨーロッパは日本と同様に公的医療保険制度のある国がほとんどなので、旅先で急な病気やケガに見舞われても、アメリカのように高額の医療費を請求される心配はありませんから、通常はクレジットカードの付帯保険だけでも補償額は十分です。
また、ヨーロッパ諸国では一般に医療費の国庫負担を減らしたい政府の関与があり、現地の人は病気になってもすぐに受診できず、自分の番が来るまで何日も待たなければならないのに対し、民間医療保険に入っている旅行者は、わりとすぐに診てもらえます。
特に、ロンドンやパリといった大都会には日本人専用クリニックが存在し、24時間体制で対応してくれるので安心です。あくまでもクリニックなので、ここでは簡単な治療を受けられるだけで、重篤であれば大病院に移されます。