「石破外し」は自民党にとって自殺行為になる

しかし、この手法は、自民党にとって自殺行為になる可能性がある。そのヒントは、昨年末以来、報道各社がさみだれ式に行っている世論調査の中にある。

フジテレビ系列のFNNが昨年12月14、15日の両日に行った世論調査結果を例に見てみたい。

この調査では「次の首相」としてふさわしい政治家は誰かを聞いていて「安倍晋三」「石破茂」「小泉進次郎」「河野太郎」「枝野幸男」「菅義偉」「岸田文雄」「野田聖子」「茂木敏充」「加藤勝信」と与野党10人の選択肢を提示している。その結果、1位は石破氏で18.5%、安倍氏は2位で18.2%、3位が小泉氏の14.5%の順だった。

前回、9月の調査では安倍氏が1位で石破氏は2位だった。安倍氏にとっては面白いはずはない。無視したい石破氏が自分を抜いてトップに立ったのだ。他社の調査でも同様の傾向が出ている。

自民党から離れそうな支持層を石破氏がつなぎ止めている

2人の順位が逆転した理由について考えたい。石破氏は今、安倍政権下で干されていているため、石破氏そのものの評価が上がったとは思えない。

従来、自民党を支持していて、今は「桜を見る会」や「IR汚職」で安倍氏を支持しづらいと考えている層が石破氏に流れたと考えるのが自然だろう。「桜」や「IR」のおかげで石破氏は漁夫の利を得ていることになるが、自民党から離れそうな支持層を石破氏がつなぎ止めていると考えれば、自民党にとっては救世主でもある。

とすれば、安倍氏が石破氏を「無視」し「排除」しようとするのは、党のウイングを狭めることになる。政権党として正しい選択肢とはいえない。

次の総裁選で、石破氏を封じ込めながら岸田氏に禅譲し、安定的な政権を続けられるのなら、それでもいいだろう。しかし、安倍氏が「後継候補」に名を上げた4人の支持は全く広がっていない。