企業にも忘年会を強制できない理由がある
一方、企業側が若手社員の忘年会スルーを受け入れてしまう理由は、人手不足だという。
「かつては新入社員が3年以内に3割辞めるのがスタンダードでした。ところが、人材会社ベースメントアップスの今年11月の発表によると、44%が辞めるというデータが出ています。ここまで辞める人が増えると、会社側は若手社員が嫌がることはできなくなります。忘年会を開くことが“パワハラ”になるのならば、企業側は忘年会を開かない決断を下すのも自然な流れです」
だが、その先に生まれるのは企業と社員双方にとって不幸でしかないと小宮氏は語る。
「会社というのは円滑なコミュニケーションが取れてうまく回るもの。何より、仲間意識が大切。1年のけじめでもあるし、どんな形であれ仕事を円滑に進めるために濃密なコミュニケーションが取れる忘年会を開くメリットは大きいのです」
高級ホテルのビュッフェをご馳走せよ
そのためには、若手社員が忘年会に参加したくなる施策が企業側に求められるという。
「参加費は当然会社負担にすべきです。さらに、お店は高級ホテルのビュッフェなど記憶に残るちょっといいお店を押さえるべき。そういうお店でも、一人あたり1万5千円程度。これがボーナスに1万5千円上乗せされていたとしても、あまり喜んでもらえませんが、高級ホテルのディナービュッフェを忘年会でごちそうすれば、社員の満足度は高まります。
私のクライアントの中には、高級すし店の『銀座 久兵衛』で社員にごちそうしている企業もあります。なぜ久兵衛なのか。それは久兵衛なら社員の記憶に残りますし、みんな知っているから地元の友達に話しても自慢になるからです。結局、心理的に社員を満足させることを考えれば、たとえ費用がかかっても忘年会は企業側にとってメリットしかないのです」
こうした高級店を押さえられない場合だとしても、忘年会に参加させる施策は他にもある。
「たとえば、勤務時間内に社内会議室で1時間くらいで切り上げるタイプの忘年会も有効でしょう。アメリカの会社は、よくオフィス内にバーを設けています。なぜか。彼らは、社員みんなでコミュニケーションを取るメリットがわかっているからです」