企業が長期存続するためにやるべきこと
見方を変えれば、浮き出た資金を引き寄せられるだけの魅力あるモノやコトを生み出さなければ、企業が長期の存続を目指すことはむつかしくなっている。この結果、企業間の競争が激化し、対応力をつけるために事業規模の拡大が重視されている。
それだけではない。世界経済の基礎的条件=ファンダメンタルズも変化している。まず、世界各国および企業が一大消費市場として注目してきた中国経済は成長の限界を迎えた。中国では、生産年齢人口が減少し、世界の工場としての地位も低下している。同時に、中国政府は国有企業などに補助金を支給し、IT先端分野を中心に世界シェアの拡大に取り組んでいる。
米国ではトランプ大統領が企業の国内回帰を目指している。また、米国はIT先端分野で中国と覇権国の地位を争うなど、世界全体で供給体制が混乱している。そのほか、中東の地政学リスクなど世界経済の不確定要素は増大傾向にある。それに対応するために、大手企業などが体制強化に取り組み、寡占が進んでいる。
寡占を食い止めるために必要な官民の取り組み
今後も、さまざまな分野で大手企業が新しいテクノロジーの研究・開発を進めたり、競合企業を買収したりすることによって、より大きな市場シェアを手に入れる可能性がある。市場の寡占度はさらに上昇し、特定企業の影響力がより強くなる展開も考えられる。具体的には、特定の企業の価格決定力が強くなり人々の生活に影響が及ぶ、あるいは、経済格差が拡大するなどの展開が思い浮かぶ。
そうした展開を食い止めるためには、企業と、政府の取り組みが重要だ。
まず、激化する競争、加速化する変化に対応し持続的な成長を実現するために、企業は常に新しい取り組みを進め、従来にはない“ヒット商品”の創造を目指さなければならない。人々が「ほしい!」と思ってしまうモノやサービスを生み出すことができれば企業は成長できる。企業が自力で寡占に対応し、成長を目指すには、一部の大手企業以上のエネルギーをもって事業戦略や組織を変革し、新しい取り組みを進めることが大切だろう。
そのためには、企業経営者の役割が重要だ。まず、経営者は自社の強みをしっかりと認識しなければならない。そのうえで、より高い成長が期待できる分野に経営資源を再配分する。同時に人々の多様性を重視し、さまざまな価値観や理論が研究開発などに反映されやすい組織体制を整備する。そうした発想を持つ企業が増えれば、競争は促進されるはずだ。