芸を見せるより、性格を知ってもらう

それから「よいしょ」。昔は旦那芸といって、長唄だとか清元だとか芸を習っていた旦那が多かったんです。それをお座敷で披露したときは、「よっ、日本一! 成田屋!」「旦那、さすがですね。今度は歌舞伎座に出てください」と声を掛けます。歌舞伎にも「大向う」といって声を掛ける人がいますよね。そんな感じで声を掛けると、旦那にいい気分になってもらえます。

とはいえ、旦那に気分よくなってもらうには、褒めすぎても白々しいでしょ。それでいて、うるさくない、嫌みのない笑いが一番です。となると、芸というよりも、その人の性格が出てくるんですね。だから私が弟子に言うのは、「芸を見せるよりも自分の性格を知ってもらったほうがいい」ってことです。

それはサラリーマンでも同じじゃないですかね。上司やお客様に気に入られようと思ったら、「あいつは仕事はできるけど、ちょっと性格が」よりは、「あいつは仕事じゃおっちょこちょいなところがあるけど、なんだか一生懸命だ」のほうが面倒をみたくなりますよね。芸は人なり、といいますが、本当にそのとおりだなあと思うんですよ。じゃあ人を磨くにはどうしたらいいかって? 私なんかが思うのは、落語や歌舞伎、意外と日本の古典にヒントがあるかもわかりませんね。古典には人のいい、品のいい笑いがあると思うんですよ。

われわれよく言うんですけど、「この仕事は難しい。間抜けじゃできません。でも利口じゃやりません」。結局バカなのか、というオチなんですが(笑)。こういう笑いも、たいこもちらしいでしょ。

(構成=東 雄介 撮影=澁谷高晴)
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