「旧高」と「新高」の生徒たちの特徴

開成の「旧高」と「新高」の生徒たち。同校で1978年(昭和53年)~2010年(平成22年)まで実に32年にわたり教鞭を執ってきた橋本弘正先生にこの点をたずねてみた。

「卒業してしまえば、『旧高』と『新高』の違いは分からなくなりますが、『新高』のほうが社会性の豊かな人がたくさんいるのではないかと思いますね。立ち回りが上手というか。彼らの多くは公立中学校、男女共学ですしね。経済面も含めて多様な背景を持った子どもたちが集まっている場所を経験したからでしょうね」「一方、中学入学者は6年間男子だけで過ごします。そして、彼らの人間関係――とりわけ、上級生と下級生が織り成す人間模様が彼らに与える影響は大きいものになる。行事ひとつとってもすべて上級生がお手本になる。言い換えると、高校生になって自らが上級生になったときは、下級生(中学生)を意識した行動をすっと取れる子が多いです。その行動は歯切れのいい『鮮やかさ』があるように思いますね」

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高校に上がって「新高」を迎えるということは、それまで違う文化の中で育ってきた同級生たちが登場するということだ。この多様性が生徒たちに刺激を与えるらしい。現在20代のある卒業生は開成の同級生たちの顔ぶれを思い浮かべつつ、こんなことばを口にした。

「開成は本当に個性の強いヤツが多い。だから、ぼくは『人を認める力』みたいなものが身に付いたように思いますね。大学に入ってからでも、『ああ、こいつはダメだ』なんてあまり思いませんし。第一印象で決めつけない、この人ちょっと苦手だなあと思っても、実はある部分で突出していて、尊敬できる人だったというケースを開成で数多く見てきたからでしょう」

開成内の格付け「百傑」と「裏百」の大バトル

「旧高」の生徒たちにとって「新高」の生徒たちとの出会いは、とりわけ学習面において大きな意味を持つという。前出・20代の卒業生は語る。

「よく言われるのが、『新高』が『旧高』にとって大学受験へのカンフル剤になるということ。旧高の成績って上か下に両極端なのです。新高がその真ん中に入ってきて、それで下のほうにいる旧高の層は焦り始める」

もしかしたら彼の学年に限った話ではないかと、彼の2つ下の大学生の卒業生に同じ質問をすると……。

「まさにその通りです。高1から『実テ』(実力テスト)が学校で始まります。ここの成績をもとに開成では『百傑』(上位100名)とか『裏百』(下位100名)と伝統的に呼ばれるのです。最初は高1の9月に実テがおこなわれるのですが、ふたを開けてみると旧高と新高の人数比は3対1のはずなのに、百傑は旧高、新高で半々になります。なぜかというと、新高の連中は高校受験で猛勉強しているわけです。そのままの勢いで高校に入ってからも旧高の連中に負けないように勉強する……。そんなとき、ぼくらはモラトリアムを爆走中。だから、高校に入った当初は新高のほうが学習姿勢はいい」

ちなみに、「実テ」の形式は東京大学の試験問題とそっくりだという。