受験生こそたっぷり寝るべき2つの理由

一つは学習の定着。授業や学習でインプットした知識は、睡眠中に脳内で整理整頓されて必要なものだけ残され、記憶として定着する。長時間勉強をして大量のインプットをしても、しっかりと睡眠をとらなければ、脳に定着しないというわけだ。

「適切な睡眠時間には個人差がありますが7、8時間、少なくとも6時間以上は睡眠をとりましょう。睡眠中は深い睡眠といわれるノンレム睡眠と浅い睡眠といわれるレム睡眠を繰り返します。記憶の定着に最も関係しているのは後半のレム睡眠です。ノンレム睡眠とレム睡眠1セットはおよそ90分。学習の定着には、そのサイクルを4セット以上、つまり6時間以上は睡眠をとるといいです」

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睡眠が大事な二つめの理由は「ストレスに強くなること」。受験には大量の学習が重圧となり、合格できるかどうかという不安もつきまとう。近年の医学部受験は競争が熾烈になり、受験生のストレスを増やしているという。

「娘の受験を見ていて、私が医学部を受験したころに比べて、学習量も増えて超人的な努力が必要だと感じました。そんな受験のストレスの中で自分を奮い立たせ勉強を続けるには、なぜ医師になりたいのかを真剣に考えることが必要になります」

そのストレスに耐えるうえで鍵になるのが、思考をコントロールする脳の前頭葉だという。

「私は前頭葉を“こころ脳”と呼んでいます。たっぷり睡眠をとって、こころ脳が育っていれば、感情を整理しコントロールできます。なぜ自分が医学部で学びたいかを考えて、冷静に取るべき行動を取るというように、ストレスをうまくいなすことができるのです。睡眠が足りず、こころ脳がきちんと育っていないと、大きなストレスがかかった場合、うつのような状態になり、思考がうまくまとまらないのです」

こころ脳がしっかり育っていれば、本番にも強くなれる。朝から晩まで、時には数日間も続く過酷な試験の中で「こころ脳が『私、できないかもしれない』と不安になると、6、7割の能力しか発揮できず、点数が取れない」と奈緒子さんは言う。せっかくの努力を無駄にしないためにも、こころ脳は重要なのだ。

「睡眠第一の子育ては間違っていなかった」

奈緒子先生が睡眠の重要性を実感したのは、娘の佳奈子さんが現役では、不合格だったときだという。

「娘はやけにならずこれからどうすべきかを3日間考え、浪人して医学部を目指すことを決め、そのあとは受験勉強にまい進しました。ショックの中、娘が考え抜いたことに、睡眠第一の子育ては間違っていなかったと実感しました」

睡眠の大切さはわかったが、実際、どのように睡眠時間を7、8時間確保すればいいのだろうか。ここからは娘の佳奈子さんに受験生時代の睡眠第一生活の詳細を伺おう。