副詞に感情を乗せ接続詞で方向づける

箇条書きにするつもりが、どうしても文章が長くなってしまうこともある。相手に理解してもらおうと思えば思うほど、言葉や要素も増えていってしまう場合は、どうすればいいのだろうか。中村氏が、コピーライターの技術を伝授してくれた。

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「コピーライターは、普段から文章を一文字でも短くすることを考えていますが、ポイントは『書き出す時間』と『削る時間』を明確に分けることです。書くこと、削ること、それぞれを意識することができるので、どこが無駄かがよくわかります。日本語は、英語のように文章の型が決まっているわけではなく、自由度が高いところが難しい。気を抜くと、どんどん長くなってしまうので注意しましょう」

山口氏も同様に「文章を短くまとめて書き出す」ことを提案する。

「まずは結論を、原稿用紙2行分にあたる40字にまとめて書いてみる。この練習を続けると、考えが整理され、思考を無駄なく言語化できるようになります。話の論理が外れないようにするためにもとても効果があります」

また、緊張しやすい人に山口氏が推奨するのは、口を動かすウオーミングアップだ。

「緊張して言葉が出てこないといいますが、朝から口を動かす練習をしておくと、言葉が出やすくなります。早口言葉でもなんでもいいですが、もし文学作品を使うなら、おすすめは『あめんぼ あかいな アイウエオ』で有名な北原白秋の『五十音』。歌舞伎の口上である『外郎ういろう売り』もいいですね」

文体の優れた名作を音読することで、人に聞いてもらいやすい話し方のリズムが身に付くという利点もある。

「五七調や七五調のリズムを意識して話すと、相手に内容が伝わりやすくなります。それぞれのリズムには特徴があり、五七調で話すと強い印象、七五調では優しい印象になります。広告でも、車や栄養ドリンクなど強いイメージを求める商品は五七調でキャッチコピーが作られていることが多いです。一方、女性が身につけるものなど、優しいイメージを求める広告は、七五調で作られているものが多い。自分が話すときも、目的によって五七調と七五調を使い分けられるといいですね。

七五調を身に付けるのにおすすめなのは、島崎藤村や北原白秋の作品。一方で、萩原朔太郎や、高村光太郎は五七調でガンガンいく感じの作品が多いです。私も授業で学生に戦記物などを教えるときは、五七調で畳みかけるように意識しています」(山口氏)

営業は、相手への印象づけも重要だ。短い話のなかでも、言葉の選び方ひとつで個性を出すことができる。

「文章になくても成立するような部分にも気を使うことがポイントです。副詞や助詞など細かいところにも丁寧な言葉遣いをする人からは『教養がある人』という印象を受けるものです。