仕事ができる人は、副詞を上手に使ってそこに自分の感情を乗せています。状態を表す『やっと』『そっと』や、呼応する『決して~ない』『到底~できない』などの副詞を上手に使いこなすことで、言葉に熱意や愛情といった感情を自然に乗せているのです」

すぐにでも使いたいのは、接続詞を使って話をロジカルにわかりやすくするテクニックだ。

「日本語は、動詞が最後にくるので、最後まで聞かないと否定なのか肯定なのかがわかりません。そこで、文の最初に『しかし』とか『ところが』といった逆接の接続詞を使うと、聞き手は『あ、今言っていることとは逆のことをこの後言うんだな』と、話の展開を予想できるため、話が聞きやすくなります」(山口氏)

意外に思われるかもしれないが、特に話し言葉では、接続詞が欠如していて、言いたい文を並べているだけの話に脈絡がない人が多く見られるという。

キャッチフレーズで伝達力アップ

言葉をうまく使いこなせれば、成約率を上げることもできる。中村氏は、自身がクライアントと商談をする際には、コピーライターとしてのこんな技術を使っていると言う。

「営業しにいったとしても、直接やりとりを行っている担当者には決定権がないこともありますよね。その場合は、担当者から決定権を持つ上司への説明が行いやすくなるキーワードやキャッチフレーズがあると喜ばれますし、うまく伝えてもらえる可能性も高くなります。たとえば経費精算のソフトを相手に売り込みたいとします。その場合『今、経費精算も生産性の時代なんですよ』というようなキャッチフレーズがあると、担当者は覚えやすく、上司にも伝えやすい。ポイントは、“精算”と“生産”という言葉をかぶせていることです。

このように、同じ音や同じ韻のワードを重ねると、相手の記憶に残りやすくなります。あるいは、『経費処理が速くなればなるほど、仕事のスピードも速くなる』というように、“速い”という同じ言葉を重ねて使うのも効果的です」(中村氏)

事前に話す内容を準備し、短い話のなかでも印象を残すテクニックを身に付けたら、自分の営業トークにかなりの自信がつくはずだ。心の余裕ができたら、次のステップへ。聞き手に対する想像力を働かせてみよう。

「言葉を選ぶときは、聞き手がどういう人なのか思いを馳せることが重要。営業の場合は、広告のように不特定多数の人に向けてメッセージを発するのとは違い、相手の顔やパーソナリティがわかるので、その人に狙いを定めて、響く言葉を選ぶことができる。ヒントは、話している会話のなかに結構あるものです。『それって結局どれくらい効果があるの?』と尋ねるような効率型の人には、数値やデータをまじえて話すといいですね。一方で、『このソフトを使うと社員の幸せ度が上がるかどうか』というような意義が響く人もいますので、見極めが大切です」(中村氏)