また、スピードや速さが勝負の今の時代において、『3つもポイントがあるなんて多いな』と受け取られ、最初の段階で、聞き手の聞く気を損ねてしまいます」

大東文化大学文学部准教授の山口謠司氏も、これまでの話し方の常識を疑ったほうがいいと指摘する。

山口謠司●大東文化大学文学部准教授。博士。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て現職。10万部を突破した『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』など著書多数。

「最後まで聞かないとオチがわからない“起承転結”型の文章は、ビジネスではもう通用しません。私が人に話し方のアドバイスをするときは、結→起→結→承→結の順で話すことを勧めています。コツは、結論を何度も繰り返して話す相手に印象づけること。さらに、自分が一番伝えたいことを初めに提示すると、人は興味を持って話の続きを聞いてくれます。話が見えないままだらだらしゃべってはだめです」

話のテンポも速さを求められている。

「先日、タレントの中川翔子さんと話をしたら『先生は話し方が遅い!』と言われてしまいました(笑)。私はかなり早口のほうですが、それでも若い人にとっては遅く感じられ、聞く気を削いでしまう。話は速く、短くないとわからない、ということです。ひとつの文を短くして、その文を重ねていくような話し方が求められる時代となった、ということでしょうね」(山口氏)

「話が迷子」を避け内容の圧縮を目指す

そもそも、なぜ話が長くなってしまうのか。中村氏の分析では、「話ながおじさん型」と「パニック型」の2パターンがあるという。

「話ながおじさん型は、話すことに対する自信があり、話しているうちにどんどん長くなっていってしまいます。一方、パニック型は、話すことに対して自信がなく、話しているうちに『何を話せばいいんだっけ』『今、何の話をしているんだろう』と話を見失い、焦ってさらに時間がかかってしまいます。両方に共通しているのは、何を話すかを事前に決めてないという点です」

改善方法は、事前に自分が話したいことを箇条書きにすることだ。箇条書きは、できるだけ簡潔に、短くまとめること。新書や実用書の見出しをイメージするといい。

「初めからポイントを絞る必要はありません。まずは話したいことをすべて箇条書きにしてみる。出し切ったら、優先順位をつけていく。たとえば10個出したなら、そのうちの4つだけ選んでみる。その次は、選んだ内容をどんな順番で話すか組み立てます。

この作業を行うだけで内容が圧縮され、簡潔に、中身の濃い話ができるようになります。道筋ができているから、話している途中にパニックになることもありません」(中村氏)