インターハイ開催地「北関東」で宿泊施設の確保困難

インターハイは2004年から地域ブロックでの持ち回り開催となっており、2019年は「感動は無限大 南部九州総体」というスローガンで主会場は鹿児島で行われた。

高体連は10年ほど先までインターハイの開催地域を決めている。本来なら来年は北関東(群馬、茨城、栃木、埼玉)で開催される予定だった。しかし、2012年に東京がオリンピックを誘致することになり、北関東から「開催年度の変更要望」が提出される。その理由は、東京五輪と開催期間が重なり、「宿泊施設」の確保が困難になるというものだった。

例年のインターハイは7月28日から8月20日というスケジュールだが、2020年だけは一部競技を除いてオリンピック閉会式翌日の8月10日からパラリンピック開会式前日の8月24日までとなっている。

インターハイは選手や監督、役員ら3万6000人が延べ20万泊するという。一方で東京五輪の開催期間前後は海外からの観光客が大量に押し寄せることが予想される。高体連が大手旅行代理店に確認をとったところ、来年8月に東京を訪れる外国人旅行者は都内のホテルだけでは収容できず、北関東まで影響が出るという回答だった。

2013年9月に東京五輪開催が決定したため、高体連は2020年のインターハイを丸ごと引き受けてくれるブロックを探したが見つからなかった。そこで高体連は北関東に「開催できる競技だけでもやってください」と再依頼。その結果、11競技は北関東地区で開催され、残り19競技が他地区で行われるという「分散開催」が決まった。すべての開催地が決定したのは今年の4月だった。

インターハイ開催するには約7億円も不足している

問題はここからだ。

開催経費は年により差があるとはいえ、平均すると開会式を除いて約12億円かかる。そのうち7~8割を開催ブロックの自治体が担ってきたが、分散開催となったことで、北関東以外で行われる競技には自治体からの支援はない。つまり“お金”がないのだ。

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なぜ12億円もかかるのか、と思われる方もいるだろう。ただ冷静に計算すると30競技あるので、1競技あたりは平均4000万円という予算になる。スタジアムなどの施設使用料と審判員などの日当・交通費などが主な経費だ。

国体に関してはスポーツ基本法で国からの補助が出るが、意外なことにインターハイは国からの補助金はほとんどない。そして、スポーツ振興くじ(toto)も教育活動の行事には助成できないという。そのため、インターハイを例年と同じように開催するには約7億円の不足となる。

高体連は2016年から「特別基金」を設置。例年は自治体が出している額を寄付で集めよう、と取り組んできた。2017年4月には、「2020年インターハイ特別基金趣意書」というチラシを各学校の運動部に1枚ずつ配布している。

しかし、現状はかなり厳しい状況だ。11月15日現在で5532万6644円しか集まっていない。「この状況をほとんど知られていないのが一番問題なんです」と高体連・西塚春義事務局長も嘆いている。呼びかけをしても、高校運動部の顧問ですら知らない人が圧倒的に多いというのだ。