日本の偉大な投資家、本多静六

投資の本質を理解した人として、もっとも偉大な方を1人、紹介したいと思います。私はよく「尊敬する投資家は誰ですか」と聞かれます。アメリカの偉大なる投資家、ウォーレン・バフェット氏や、その師匠のベンジャミン・グレアム氏を尊敬しています。しかし、日本人の投資家にも、すごい人はいます。

それが、本多静六(ほんだ・せいろく)さんです。

本多さんは1866年生まれで、東大教授なども務めた明治・大正時代の造園技師です。超一流の造園技師であり、投資家でもあるというスーパーマンです。日比谷公園など、彼の造った公園は今でも名庭園として多くの人に愛されています。

彼は仕事のかたわら、収入の4分の1を天引きで貯蓄し、それを株式に長期投資しました。退官するまでに現在の価値で100億円を超す資産をつくったそうです。ちょっと信じられないような話かもしれませんが、事実なのです。なぜ、彼はそんな偉業を成し遂げられたのでしょう。

投資の本質を語るとき、私は次の本多さんの言葉を引用します。「人生は生ある限り、これすべて、向上への過程でなくてはならない。社会奉仕への努力でなくてはならない。もし老人のゆえをもって、安穏怠惰な生活を送ろうとするならば、それは取りも直さず人生の退歩を意味する」

本多さんの主張は一貫していて、努力と成長を尊んでいます。それも、自分のための努力だけでなく、利他的な努力です。まさに、真の投資家的な思考です。

社会的な成功の多くは、利己的な動機に基づくことがほとんどで、それはごく自然なことでしょう。ところが、利他的な目標にすると、より大きな成功をもたらします。私は、多くの成功した経営者や投資家を見てそう感じます。利他的な動機による努力のほうが、社会的な影響度が大きく、より大きなパワーを生み出すのです。