スタバと1年違いで上陸、親会社は伊藤園

コーヒー業界に「シアトル系カフェ」(シアトル系コーヒー)という言葉がある。

一般には、従来の喫茶店で提供されるドリップコーヒー(コーヒー豆を焙煎・挽いた後で抽出)ではなく、エスプレッソをベースにする。ミルクを加えたメニューでも、ドリップ+ミルクが「カフェオレ」、エスプレッソ+ミルクが「カフェラテ」と呼ぶことが多い。

シアトル系の代表が「スターバックスコーヒー」で、「タリーズコーヒー」もそうだ。米国シアトルで、スタバは1971年、タリーズは1992年に創業された。日本に上陸し、1号店を開業したのは1996年(スタバ)と1997年(タリーズ)の1年違いで、1999年に日本1号店を開業した「シアトルズベストコーヒー」(米国の1号店は1970年)とともに、当時は“シアトル系御三家”とも呼ばれた。たが、その後、シアトルズベストは伸び悩んだ。

タリーズを日本に誘致したのは、日本法人創業時の松田公太・元社長(元参議院議員)だ。同氏の印象が強いが、現在、資本関係は一切ない。2006年から伊藤園のグループ企業となり、現在の代表取締役・荻田築会長は、伊藤園の元副社長・副会長を歴任した人物だ。

同グループとなって13年。伊藤園の自動販売機の中にはタリーズの飲料があるなど、親会社のブランド力も背景に拡大。長年増収増益を続ける“孝行娘”だ。

安定した人気の秘密を、筆者は「基本の徹底」と「奇をてらわない」姿勢だと考えている。具体的に説明しよう。

舌をかみそうなメニューも少ない

カフェの基本となる「コーヒー」は、タリーズでは、担当者がコーヒー生産地に直接出向いて生豆を調達する。産地のブランドやグレードなどにこだわらず「ユニークで際立った特徴がある」といった条件で、カッピングによる味と香りの評価で選ぶという。こうして調達された豆を国内の工場で焙煎する。その豆を店内でれるのは社内のバリスタ(コーヒー抽出者)だ。

「ご注文後にバリスタが半自動式マシンで1杯ずつ丁寧に抽出します。コーヒー粉の重量、抽出時間、抽出量など細かいルールがあり、ボタンを押せば出てくる飲料ではありません。品質維持やスキル向上のねらいもあり、毎年バリスタ競技会も実施します」(山口さん)

筆者撮影
タリーズコーヒージャパン広報室の山口さほりさん

引いた視点でタリーズの活動を見ると、スタバへの意識がチラ見えする。例えば従業員をスタバは「パートナー」、タリーズは「フェロー」と呼ぶ。バリスタ競技会は両社ともに約20年前(ほぼ同時期)から行い、その名称は前者が「アンバサダーカップ」、後者が「バリスタコンテスト」だ。