ヤフトピに「ライン・ヤフー統合」のニュースが1本もない
映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』でメリル・ストリープ演じるワシントン・ポスト社主のキャサリン・グラハムの言葉を借りれば、「質(クオリティ)が利益(プロフィッタビリティ)をつれてくる」ことをよく知っていたということになる。
統合後のヤフー・ニュースは、川邊健太郎構想の要、「さまざまなシナジーを効かしていく」という方針の中では、難しい局面を迎えることになる。たとえば、位置情報とペイペイがあわさって店に誘導する、そこまではいい。しかし、これにニュースが連動することになれば当然、ニュースの信頼性や倫理の問題に触れてくる。
何よりもヤフーが創業以来、大切にしてきた「ヤフー・ニュース」の公共性が揺らぐことにならないように、経営陣がしっかりとしたグリップを効かせることが必要だ。
たとえば、現在までのところ、ヤフトピに、ライン・ヤフーの統合のニュースが1本もあげられていないのはどうしたことだろう。
ヤフトピの創設者である奥村倫弘は、かつてニュース部門を率いていた宮坂学に、「ヤフトピはヤフーやスポンサーにとって悪いニュースこそをむしろとりあげる。それが最終的には両者の利益になる」と言い、宮坂は感動していた。
そうした創業のDNAを忘れてはならない。
ヤフーから抜けられるのは「電子有料版」だけ
新聞社や出版社などのコンテンツを提供している側は、これまでも広告料の7割から9割をヤフーにとられてきたが、ヤフーとラインの統合でこのプラットフォームが大きくなることで、情報提供料などの価格交渉でさらに劣勢に立たされることになるだろう。
多くの新聞社や出版社は、経営者がプラットフォーマーの意味を理解せず、ヤフーに記事を出し続けてきたことで抜けられなくなっている。組織が年功序列であり、和をもって貴しとなすので、デジタル部門の収益が一気に下がるような、ヤフーからの引き上げはこれまでできなかった。
読売グループ現社長の山口寿一も、社長室長時代の2000年代後半に、日経、朝日との共同のポータル「あらたにす」の開設に挑んだが、結局、読売をヤフーから抜けさせることは、全社的な理解が得られずできなかった。
こうした中、抜けでていくメディアは、ニューヨーク・タイムズやエコノミスト、そして日本経済新聞のように、そこだけでしか読めない調査型の記事を電子有料版でだすメディアだけだろう。日本の出版社では東洋経済新報社、ダイヤモンド社は早い段階でそのことに気がついて2011年ころから社の組織自体を変えてきている。