目的は、GAFA、BATHに対抗する「第三極」になること
今年6月の株主総会でヤフーの会長を退任し、完全にヤフーから離れた宮坂学と飲んでいた時、ヤフーの国際化の話になったことがある。
宮坂は「今、世界の人々は、GAFA陣営かBATH陣営のどちらの経済圏に入るかということになりつつある。しかし、その中でアジアの国々でそれなりのプレゼンスをもって出ていっているのがラインだ」と語っていた。
そのことがあったので、私はすぐに、この統合の本当の狙いは、ヤフーのグローバル化にある、と踏んだのだった。
実際、11月18日の記者会見で、川邊健太郎ヤフー社長と出澤剛ライン社長の二人は、はっきりと今回の統合の目的を、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」になることとした。ラインがすでに進出し優勢となっているアジアのタイや台湾、マレーシアのような国々を足掛かりに、米国勢のGAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)、中国勢のBATH(バイドゥー、アリババ、テンセント、ファーウェイ)に対抗する第三極としてのグローバル展開が目的と言明したのだった。
学生全員は「ニュースはラインで見ている」と答えた
川邊社長は、今回の統合は弱いところをお互いに補う、シナジーの効果が高いとも言った。
確かに、SNSを出発点にコマースや決済サービスに広がってきたラインは若年層に強く、パソコン時代からのヤフーは中高齢層に強い。
だが、その中で気になるのは、両社のシナジーが効かず、ほぼ同じ事業を行っている分野だ。
そのひとつにニュースがある。
ヤフー・ニュースは後発のライン・ニュースを常に気にかけていた。私は、慶應SFCで調査型の講座「2050年のメディア」を持っているが、その中でヤフー・ニュースの幹部の取材に立ち会ったことがあった。そのとき、幹部は学生たちに、「ニュースはどのアプリで得ているのか?」と聞いたが、全員が「ライン」と答えた。
「まずラインでメッセージをチェックしてそのまま画面の下にいって、右に指を動かしニュースをタップ、ニュースをチェックする。そう手がもう覚えてしまっている」
こう学生が答えたとき、その幹部は明らかにショックをうけていたように見えた。