古今東西、歴史に名高い英雄・偉人でも、というより“だからこそ”、嫉妬とは無縁ではいられない。彼らは、この厄介な感情とどう付き合ったのだろうか。

嫉妬は人の心を餌食にする

関ヶ原の戦いで西軍の首脳の1人となる大谷吉継は、盟友の石田三成にこんなことを言っています。

彦根城博物館/DNPartcom=画像提供
関ヶ原合戦図屏風

「惣じて其許(あなた)は、諸人へ対し申されての時宜(タイミング)、作法、共に殊の外、へいくわいに候」

この「へいくわい」とは横着の意味です。三成は秀吉の家臣では飛び抜けて有能な人物ですが、人にもの申すときの配慮に欠けている、それはよろしくない、と吉継は三成に苦言を呈しているのです。

歴史上、社会背景やものの見方、考え方は時代により異なります。しかし、喜怒哀楽といった人が本来持つ感情と、それによって引き起こされる行動は、いつの時代もそう異なるものではありません。歴史上の人物の心のありようを追っていくと、そこに現代のわれわれが学びとれる事柄が見えてきます。

例えば三成が関ヶ原で徳川家康率いる東軍に敗れたのは、彼に人望がなかったからだとよく言われます。しかし、それが事実であっても、その事実のみから学べるものは、さほどありません。なぜ彼は人望を欠いたのか。それを追究することが、歴史に学ぶうえではとても大切なのです。