男性は他人に弱みを見せるのを嫌う傾向があるといわれる。医学博士の奥村歩氏は、「男性は悩みを一人で抱え込みがちなので、うつ病になると重症化しやすい。うつ病による自殺者のほとんどは男性だ」という――。(第2回/全5回)
※本稿は、奥村歩『「朝ドラ」を観なくなった人は、なぜ認知症になりやすいのか?』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
うつ病発症率には「セロトニン」が大きく関係している
男性と女性では、うつ病のなりやすさやこじらせ方においても大きな違いがあります。
その特徴・傾向の違いを簡単にまとめると、女性はうつになりやすいものの、軽度の段階で症状を訴えるため、大ごとにはなりにくい傾向があります。
一方、男性はうつになりにくいけれど、いざ、なってしまうと周囲に隠して辛抱してしまうため、症状を訴えたときにはかなり悪化していることが多い。そのため自殺などの大ごとにつながりやすい傾向があるのです。
こうした男女差の傾向は、私が診てきたうつ病の患者さん方の大量のカルテからも明らかです。いったいなぜ性差で違いが現われるのか、ちょっと説明しておきましょう。
まず女性です。うつ病と診断される女性の患者さんはとても多く、発症率は男性の約2倍もあります。
その原因は脳内物質のセロトニンの影響が大きいとされています。
よく知られるように、セロトニンは精神の安定に深く関係している物質で、不足すると不安やイライラ、落ち込みなどを訴えやすくなります。ところが、女性はこのセロトニンが慢性的に不足しがちなのです。