「あそこまでは自分にはできないな」と周囲に思わせる

被害を少しでも抑えるために、国民一人ひとりが自力で身を守る備えをしてほしい。僕が自分に注目を集めたい理由は、このメッセージを1人でも多くの人に届けるためです。「あの赤い服を着た派手な教授が、なんか大変なことを言っているぞ」と耳を傾けてもらいたいのです。

「35年±5年」という表現は、正確さを問われる学者としてはギリギリセーフのラインです。学界の王道を往くのであれば「今後30年以内に70%の確率」と言うべきでしょう。けれども、そんな言い方をしても一般の方には伝わりません。本当に大変なことが起こるんだと認識してもらうには、具体的に表現しなければならない。だからといって「何月何日、どこそこにマグニチュード○の地震が起こる」と告げたら、それはもう科学とは言えません。僕の予測は、学者としての土俵に何とかとどまっているのです。

赤い服、派手な装いを始めたときは、確かに「なんだあれは!」と周りのみんなは眉をひそめていたと思います。けれども、僕には地震の恐ろしさを知ってもらうという大義名分があります。「35年±5年」と言うのと同じです。しかも本音を明かすと、ファッションが面白くなり、もはや趣味の段階をはるかに超えて、毎年ボーナスをすべてつぎ込むレベルに達しています。身上をはたく覚悟でやる、という意味では道楽なのです。

写真=iStock.com/jacoblund
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このレベルまで突き抜けると、周りも「まあ、鎌田さんはああいう人だから(仕方ないか……)」と認めてくれる。出る杭は打たれると言うけれど、出すぎた杭は打ちようがないのです。1つ抜きん出てしまい「あそこまでは自分にはできないな」と周囲に思わせてしまったら、何も怖いものはありません。仮に嫉妬されたとしても、それは周りが認めている証しぐらいに受け止めておけばいいのです。

【対策】「マグマの赤です」。目立つ理由を簡単に説明

(構成=竹林篤実)
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