ただし人間は、どんな人間の言葉でも素直に受け入れられるわけではない。
面白い実験がある。ある人(Cさん)に向かって、同じ内容の忠告をAさん、Bさんに言わせる。Aさんは清潔感溢れるイケメン。Bさんは不潔感溢れるメタボ。まったく同じ内容の忠告なのだから、Cさんは両者の忠告を聞くかと思いきや、さにあらず。Aさんの忠告は受け入れても、Bさんの言葉には耳を貸さないといった違いが出てくるのである。

同じことを説得するのでも、信頼感のある人のほうが受け入れられやすいなど、説得者側の要因で結果が変わることが心理学の研究で明らかになっている。これは努力でどうなるものでもない、人間的魅力が影響する部分が大きい。どこの馬の骨ともわからない劉邦が、前漢の初代皇帝に上り詰めたのは、部下との間に互いによき説得者となれる関係を築けたからだろう。
これを、説得者要因という。人が説得を受け入れるか否かは、被説得者が説得者に対して好感を持っているかどうかにかかっているのだ。すぐさま思い浮かぶのは、江戸城無血開城の場面だ。勝海舟と西郷隆盛は会った瞬間にお互い認め合う間柄になったというが、おそらく好感の持てる説得者同士だったからに違いない。人間は、好きな人の言葉を受け入れる生き物なのである。
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(構成=山田清機)
