決断しない幹部は幹部と認めない

小嶋は意思決定を非常に重視した。

当たり前のことであるが、決断をしない幹部は幹部として認めなかった。

「あのなあ、君が幹部たるゆえんは意思決定する人だからや。間違ってもよい、修正すれば済むことや。しかし意思決定しないでは、そこの域まで行かず、何もことが進まない。幹部失格や」

といって、意思決定しない幹部をよく大声で叱っていた。

人の失敗に対しては寛容であったが、意思決定の放置・先送り・責任逃れは決して許さなかった。

自らが意思決定をすることによって責任が生まれ、達成するよう手だてを考えることが身に付くのである。意思決定を避ける人は本当の意味で能力は低いと評価すべきである。

冒険家で有名な西堀栄三郎は「先に決定しあとからリスクを低減するよう考える」と『石橋を叩けば渡れない』で何度も表現している。

経営とはその意味で冒険でありリスクテイクなのである。

100歳をこえても判断スピードは衰えない

同様に、小嶋が経営において重視したのはスピードである。

経営は限られた時間と限られた情報とで意思決定を迫られる。したがって経営者はとにかくせっかちで、小嶋もそうである。

あるとき、「あれできたか?」というので、「今調査中です。まとめてから提出します」と答えると、「遅い。もうええわ」という。

さすがに、そのままではいられないので、「この前小嶋さんがこのように言いましたので、検討しているのです」と言い訳をすると「あのなあ、私は結論をもっている訳ではなく、いろいろ思案しているのや。それと考えも変わることがあるんや。そのための案を作れと言ったんや。とにかく、はよせい」との答え。

頭の中で試行錯誤、シミュレーションをしているのである。

君子は豹変ひょうへんする。当初の指示された内容を充実させることもさることながら、何事も速くすることを学んだ。

あるとき、小嶋の私設美術館・パラミタミュージアムで作品の展示替えを行うことになった。

日通美術部職員の作業が遅く、手つかずの作業が残っていたのを見て、小嶋は「もう待っておれんな。君と動かそう」と言いながら、重い石の作品を二人で釣り上げ移動したことがある。

なんと小嶋90歳、私60歳である。

さすがに、体にとってはどうかと思うが、とにかくそれほどせっかちなのである。

組織の大企業病、老化現象は、スピード感に現れる。

いま齢100を超えてなお、小嶋は物事の判断スピードは衰えていない。そのスピード感は、「ほかより早く」という先鞭せんべん性として、ジャスコの組織文化になった。