カーボンファイバープレートの「厚底靴」を他メーカーも発売

ナイキの厚底シューズで最も特徴的なのは、カーボンファイバープレートが使用されていることだろう。シューズの爪先がせりあがっており、重心を前へ傾けることで、前足部がググッと曲がり、カーボンファイバープレートがもとのかたちに戻るときに、グンッと前に進む。しかし、このシステムを採用しているのは、もはやナイキだけではない。

ホカオネオネは2月に「EVOカーボンロケット」を、ニューバランスは9月に「フューエルセル5280」というカーボンファイバープレートと高反発のフォームを組み合わせたモデルを発売している。他にも同様のシューズを開発中というメーカーのうわさがある。

写真提供=ナイキ
MGCでは3位だった大迫傑選手もナイキの厚底を履く

そもそも陸上競技のスパイクにはカーボンタイプのソールを使用しているものが少なくない。見た目は随分と違うが、マラソンの厚底シューズは短距離のトップスプリンターが履くスパイクに似た原理といえる。

また、両足義足のスプリンターで「ブレードランナー」の異名で注目を浴びた、パラリンピック・オリンピック陸上選手オスカー・ピストリウス(南アフリカ)の例もある。

IAAFは、ピストリウスが一般選手と同じ速度で走るとき、約25%少ないエネルギー消費で足りることなどの優位性をテストで実証。カーボンファイバー製の義足は、「競技力向上を手助けする人工装置」にあたるとし、一般の大会への出場を禁じると発表した。

しかし、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は、「義足が身体的、機能的に他の選手に比べて有利となることを証明し切れたとは言えず、参加を禁じるだけの根拠は不十分」として退けている。となると、カーボンファイバープレート入りのナイキの厚底シューズも問題ないと判断される可能性が高いのではないか。

「レーザー・レーサー」禁止後、世界記録が23個更新された

ギア(衣服・道具など)の規制で思い出されるのが、競泳水着の「レーザー・レーサー」だ。2008年の北京五輪ではトップクラスの選手のほとんどがレーザー・レーサーを着用。世界記録が23個も更新されたものの、2010年からは着用が禁止となる。国際水泳連盟(FINA)が水着素材を布地のみに制限する規定に変更したからだ。

その後、記録が低迷したかというと、そうではない。当時の記録を多くの種目が越えて、続々と世界記録が誕生している。何かしらの規制があったとしても、それを上回るような新たなテクノロジーが開発されていくものだ。