カーボンファイバーを航空宇宙産業で使う特殊素材フォームで挟む

渦中のシューズは、反発力のあるカーボンファイバープレートを、航空宇宙産業で使う特殊素材のフォームで挟んでいるため、「厚底」になっている。それなのに重量は28cmで片足184gと軽い。推進力が得られるだけでなく、脚へのダメージが少ないという画期的なモデルだ。

画像=ナイキのウェブページより
「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」の軽量のカーボンファイバー製プレートと厚底の分解図

厚底シューズの初代ともいえる「ズーム ヴェイパーフライ 4%」(2017年7月に一般発売)はナイキの代表的レーシングシューズよりランニング効率を平均4%高めることを目標に開発された。なお、南アフリカ・フリーステート大学の運動生理学者ロス・タッカーは、「ランニング効率が4%高まると、勾配が1~1.5%の下り坂を走るのに相当する」と分析している。

今年7月に一般発売された「ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」は、最大85%の高いエネルギーリターンだというフォームの量を全体で15%増量。その分、エネルギーリターンも増えた。本来ならシューズは重くなるところだが、アッパー部分の素材を軽量化したことで、シューズの重さは変わらない。

「厚底」シューズは普通の市民ランナーも入手可能

ベケレとコスゲイは、最新モデルの「ヴェイパーフライ」を着用。キプチョゲだけは、これまでの厚底シューズをカスマイズしたモデルを履いていた。そのシューズは“超厚底”といえるものだ。

画像だけでなく、設計図も公開されているが、前足部は「エアユニット」が2段重ねで搭載されている。これまでのナイキのシューズ戦略を考えると、キプチョゲの履いていたプロトタイプは、今後一般発売されるモデルの“原型”になるものだと推測できる。

IAAFはシューズに関して、「使用される靴は不公平な補助、アドバンテージをもたらすものであってはならず、誰にでも比較的入手可能なものでなければならない」と定めている。

以前は品薄状態が続いていたとはいえ、ナイキの厚底シューズは限られた選手仕様ではない。普通のショップで市販されており、誰でも「入手可能」だといえる。問題は「不公平な補助、アドバンテージをもたらすもの」か、どうかだ。