なぜ42.195kmを1時間59分40秒で走破できたのか

こうした声が出てきた背景には、この秋、ナイキで走ったランナーのタイムが劇的に伸びたことが挙げられる。

9月29日のベルリンマラソンでケネニサ・ベケレ(エチオピア)が世界記録に2秒と迫る2時間1分41秒をマークすると、10月12日にウィーンで行われた「INEOS 1.59 Challenge」というイベントで世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)がとんでもないことをしでかした。

41人の世界トップクラスの選手が交代でペースメーカーを務める非公式レースながら、42.195kmを1時間59分40秒で走破したのだ。キプチョゲは一昨年5月にも「BREAKING2」という非公式レースを2時間0分23秒で走っている。今回はシューズの進化もあり、“2時間切り”を達成した。

写真提供=ナイキ
2020東京五輪のマラソン日本代表に内定したトヨタ自動車の服部勇馬選手

さらに10月13日のシカゴマラソンではブリジット・コスゲイ(ケニア)が2時間14分4秒で連覇を達成。ポーラ・ラドクリフ(英国)が16年以上も保持していた女子の世界記録(2時間15分25秒)を1分21秒も塗り替えた。

コスゲイは前年のシカゴも制しているが、そのときの優勝タイムは2時間18分35秒。従来の自己ベストは今年4月のロンドンでマークした2時間18分20秒で、そのタイムを一気に4分16秒も短縮したことになる。

「ナイキのシューズは“ドーピング違反”なのではないか?」

ちょっと想像が追いつかないほどの記録が立て続けに生まれたことで、ナイキを使用していないアスリートグループが不満を訴えた。そして、国際陸連(IAAF)が調査に乗り出すと、BBCやESPNなど欧米主要メディアが10月19日までに報じた。

両メディアともIAAFの「いくつかの技術がスポーツの価値とは相容れないサポートをアスリートに提供しているのは明らかだ。IAAFの課題は新技術の開発と使用の促進と、普遍性、公平性の維持との間で適切なバランスの技術的ルールを見出すこと」というコメントを掲載した。ESPNの見出しは「キプチョゲ、コスゲイの偉業によりシューズテクノロジーへの懸念が高まっている」で、本文中には「より厳しい規則につながる可能性がある」と規制に発展する可能性を指摘している。