レジを新調するより安いのに「QRコード決済」をためらう理由
というのは、そもそもキャッシュレス決済の普及を阻んでいたのは、中小規模事業者、特に個人商店がキャッシュレス決済を導入するモチベーションが低いことだ。キャッシュレス決済になると、収入はキャッシュレス決済事業者からの入金がないと成り立たない。現金で商売を回していると、「来週にしか入金がない」「来月にならないと入金しない」サイクルは不利なだけだ。しかも、決済の導入には機器も必要になる。
コンビニやスーパーなどの大手チェーンだけで使えても、キャッシュレス決済は普及しない。だからこそ、中小以下の事業者にキャッシュレス決済を導入するモチベーションを用意する必要がある。
今回は「中小以下の規模の事業者で買うとポイントバック率が上がる」ようにし、消費者側が大手だけでなく中小の店を利用する比率が上がるようにして、キャッシュレス決済の導入を促す施策を導入した。キャッシュレス決済事業者側でもこの時期に合わせた営業活動が行われており、キャッシュレス決済そのものの導入ハードルは下がっている。
そもそも、現在広がっている「QRコード決済」は、店舗に導入するためのハードウエアコストが低く、中小規模の事業者に向いている。極論、店主が使っている普通のスマホやタブレットで対応できるからだ。
分かりにくい、見つけにくい、検索アプリはひどい
だが、本当にこの施策が有効に働いているかは微妙なところがある。
まず、キャッシュレス決済でのポイントバック、という仕組みの分かりにくさだ。例えば大手コンビニなどは、キャッシュレス決済が行われると同時に割引が発生している。これは、決済時に即時ポイントバックを適用した扱いにするという施策を採っているからだが、ほとんどのところは「後日集計され、ポイントの形で割戻分が適用される」形。
いつ、どこで、どのように割引きになるのかが消費者に分かりづらい。10月1日からポイントバックは始まっているが、実際にはまだ受け取っていない分も多いはずだ。
次に、どこで使えるかが分かりにくい。導入が周知されており、「このチェーンなら使える」ということが明確な大手はともかく、導入している店舗とそうでない店舗が入り交じる個人商店では、まず「使えるか」を確認するのが手間だ。使えるキャッシュレス決済が限られる場合もあるが、そこまで把握しないといけない。経済産業省はポイントバック対象店を登録制にし、登録店舗へとステッカーやポスターを配布して周知に努めているが、その掲示が徹底されているわけでもない。