南アフリカに勝つための「条件」(解説:相沢光一氏)

出場登録選手31人を身長・体重ともに上から順番に示した折れ線グラフを見ると、上位数人以外はほとんど差がない。体重に関しては、中位はむしろ日本選手のほうが上まわっているほどだ。外国出身選手が半数近く含まれているとはいえ、日本は世界標準に大型化されたチームになったといえる。

ただし、上位の選手に見られる明らかな体格差が、優勝を狙う強豪とチャレンジャーの差ともいえる。

まず身長だ。データを集計・分析した本川氏は「南アフリカの場合、大きい選手はグッと大きく、中位以下の選手は日本とあまり変わらないという体格分布のメリハリが違う」と書いているが、このメリハリが強豪の証しなのだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/PeopleImages)

ラグビーではフィールドに立つ15人全員が高身長である必要はない。ゲームの局面で高さがものをいうのはラインアウト(※)の時。マイボールラインアウトを確実に確保することが、ゲームを優位に進める必須条件だが、極端にいえば、スローインされたボールを主に受ける役割のロック(背番号4と5のポジション)2人の身長が高ければいいのだ。

※タッチラインからボールを5m以上投げ込んで、2列に並んだ各チームのプレーヤーがボールを奪い合う。

南アフリカはチームに登録されているロックの選手4人のうち3人が2m超で、残る1人も198cm。日本は最長身のトンプソン・ルークが196cmで、ロック陣を比較すると10cmほどの差がある。

ラインアウトの時、ボールの受け手の選手の体を、前後にいる選手が支えるように高く持ち上げるようにしている。このプレーは「リフティング」と呼ばれることがあるが、ルールとしてはジャンプした受け手の体が落ちないように支えているという解釈で、サポーティングが正しい。

このラインアウトでは当然受け手の身長が高いほうが有利だ。サインプレーがある上に、高身長の選手を高々と持ち上げる。身長2m超の選手が1m以上持ち上げられ、さらに手を伸ばせば最高到達点は4m近くになる。高身長のロックがそろう南アフリカのマイボールラインアウトのボール獲得率はほぼ100%といっていい。

一方、受け手の身長が10cm近く低い日本はもしサインを読まれてしまうとボールを奪われる可能性が出てくる。実際、スコットランド戦では1回、マイボールラインアウトの獲得を失敗している。ロックの身長差は精神的なハンデになることもあるのだ。南アフリカ戦でも、このラインアウトの攻防が勝敗を左右する可能性が高い。

重量FWのチームにもスクラムは負けていない

では、体重差はどう影響するだろうか。

スクラムを組むフォワード第1列(背番号1~3)と第2列(4~7)を平均すると南アフリカが日本を3kgほど上まわっている。スクラムに関しては、アイルランドやスコットランド、そしてパワー自慢のサモアにも負けなかったように、南アフリカとも対等に渡り合えるだろう。

「スクラム番長」と呼ばれるほど理論と指導力に優れる、日本代表の長谷川慎コーチに鍛えられたスクラムの安定感は体重差を感じさせないものがある。もちろん、南アフリカは巨漢フォワードゆえ、そのアタックに手こずる可能性はある。