ご近所付き合いが苦手だ
ご近所付き合いに悩みを抱えている方に手に取ってほしいのが、『人間の条件』です。やや難解ですが、人が社会に参加することの意義と方法を論じている哲学書です。
著者のハンナ・アレントはドイツ出身の哲学者、思想家で、「公共哲学の祖」とも呼ばれています。ユダヤ人で、ナチズムの台頭により米国に亡命しました。ナチスドイツによるユダヤ人虐殺を裁いた「アイヒマン裁判」では、「悪の陳腐さ」を問いかけ、世界中で議論を巻き起こしました。
彼女は本書で「人間の条件」、つまり人間の営みには3つの大事なことがあると指摘しています。「労働」「仕事」「活動」です。ここでいう労働とは日常的な家事と考えればよいでしょう。仕事とは生活の糧を得るためのもので、より創造的なやりがいや自己実現につながるものです。私たちはたいていこの2つだけで日々の生活を送っていますが、もう1つ、労働や仕事を超えた社会とのかかわりである活動が重要だと彼女はいいます。
活動が大事な理由の1つは、それが社会にとって必要だからです。人間がみな利己的になって社会参加しなければ、社会秩序や地域コミュニティーは損なわれます。誰もが社会にかかわることで、多様な視点を持つ人たちが自分の利害を超えて、社会の問題を考えたりすることができるようになる。ですから私たちは、ご近所付き合いや地域社会を軽視しがちですが、よりよい社会をつくるために積極的にかかわるべきなのです。