福岡県警が段ボール36箱分を押収

96年にはトヨタ自動車と共同出資の住宅販売会社を設立し、サッポロビールの営業研修を受け入れるなど経済界での認知度も急速に高まっていた。店頭市場(現ジャスダック)への株式上場も射程内におさめ、当時の林にはいくらかの慢心があったかもしれない。

そこへ降って湧いたのが、前出の社名公表だ。国から「悪徳業者」と名指しされたに等しい、重大な出来事である。

「最初は夢だと思った。ところが、何度頬をつねってみても痛いんです。何も食べられなくなって、3日間で七キロも痩せました。4日目に初めて口にしたのはカレーうどんですが、喉に引っかかって、うまく食えなかったですよ」

それでも社内では「売上高は前期の600億円から450億~500億円に減り、支店も108店のうち20店ほどを閉めることになるだろう。しかしダメージは1年で回復する」と、強気の発言を繰り返したが、7月の社員逮捕でイメージ悪化は決定的となった。

暑い盛りに福岡県警の捜査員が大分本社を訪れ、段ボール36箱分の資料を押収していった。博多の訪販法違反事件が、会社ぐるみかどうかを判定するためだ。県警は結局、7カ月後に法人としての朝日ソーラーの立件を断念するが、すでに同社は、そんなことでは回復できないほどの深手を負っていた。1年後に支店数はわずか18になっていた。

林は福岡の工業高校時代は県下の総番長として鳴らし、喧嘩をすれば誰にも負けない自信があった。朝日ソーラーをトヨタやサッポロビールが一目置くほどの“強い会社”に育て上げた実績も、不祥事1つで消えてなくなるわけではない。だが、そんな林も一連の事態には立ち向かいようがなかった。

無力感にさいなまれ、大分市内の自宅に引きこもったのはそのころのことだ。庭の花に水をやるだけで、3日ほどぼんやりと過ごした。

「正直にいうと、人に会うのが怖かった。申し訳なくて、社員とも目を合わせられんのです」