日本の幼少期教育の弱点

32カ国からなるアジアラグビー協会(現アジアラグビー)の会議に出席したときのことです。誰かが意見を述べたり、提案をしたりすると、出席者は自分の意見をはっきり言います。たとえば、「I don’t agree with you.」(私は、あなたに賛成できません)と。

私たち日本人の多くは、そういう意見を人前で言われると、面子をつぶされて、感情的になりがちです。ところが、英語でのコミュニケーションでは相手の意見に反対しても、会議が終わるとすぐに一緒にビールを飲むことができます。つまり「相手の人格を否定しているのではなく、あくまでもあなたの意見に反対しているだけなのだ」と。それが英語圏の人たちの発想です。

しかし、アジアの国では、タイなども日本と似ていますが、人前であまりはっきり言うことをよしとしない文化を持つ国が多いですね。ですから、遠慮したり、我慢して、反対意見を言えずにいると、特に香港などの英国系の代表にどんどん議論の主導権を持っていかれてしまう。ひいては議論そのものに負けてしまうことになります。私たち日本人は小さい時からそういう教育を受けていないので、一番注意して取り組むべきことだと思います。

「今日の試合はエンジョイできたか?」

私の人生観の基本になっているのは、「エンジョイ」という言葉です。ウェールズに留学し、大学ラグビー部でプレーしたときに、この言葉の本当の意味を知りました。

試合に負けたあと、落ち込みながらシャワーを浴びていると、チームメートが「今日の試合はエンジョイできたか?」と聞いてくるんです。私は、「負けた試合なのに、どうしてエンジョイできたと思うのだろう?」と不思議でした。

その後、いろいろな体験から彼らがいう「エンジョイ」とは、単に「楽しむ」という意味ではなく、「自ら全力を出し切る」ということであり、その結果、「充実感が得られたか」という問いになっているのだとわかるようになりました。

ウェールズのコーチの言葉が強く印象に残っています。

Enjoy every minute of your game.(試合の一瞬一瞬をエンジョイ=燃焼しろ)

招致開始から16年、日本で開催のラグビーワールドカップの一試合一試合を、一瞬一瞬を、日本の人たちが世界の仲間たちとエンジョイできることを願っています。

(構成=樽谷 哲也)
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