安倍政権は税制を独裁的に改正している

安倍政権の特徴は、本来、「公平・中立・簡素」という大原則を順守しなければならない税制を、自身の政治的な目的のために利用しているところです。「安倍一強」という強固な基盤を背景に、税制改正も官邸主導で独裁的に決めているようです。

長い間、税制を改正する際は、財務省と自民党税調の間で議論をしながら着地させてきました。かつて党税調の権威は絶大で、ときの首相といえども介入することはできませんでした。

しかし安倍首相は、法人税減税など主要な議論を政府税調にゆだね、徐々に党税調の弱体化を図ってきました。その挙げ句、税制の論理から消費税の軽減税率導入に抵抗し、財務省と組んで還付案を主張した税制のプロ、当時の野田毅自民党税調会長を更迭したのです。これは軽減税率を公約に掲げてきた公明党への政治的配慮だったと見られています。

いまや、この国の政権与党は、人気とりのための場当たり的な政策のために、税制を安易に、しかも恣意的に駆使しています。

「多く稼いだ者が多く納税する」という原則が壊れる

税制の恣意的な利用の代表格が、「成長志向の法人税改正」です。政権の意向に沿って法人税を引き下げるため、政府の税制調査会は法人税減税の代替財源探しに狂奔しており、課税ベースの無定見かつ、変則的な拡大を推し進めています。

政府税調は、代替財源の大半を「外形標準課税」の拡大で賄うことにしているようです。これは資本金1億円超の企業に対して、業績は赤字でも、従業員や役員へ払う報酬給与額、支払利子、支払賃借料といった企業の付加価値額とともに、資本金等の額へ課税する仕組みです。

この外形標準課税の最大の問題は、「多く稼いで負担能力のある者が、多くの税金を負担する」という応能負担の原則に反している点です。黒字企業だけが負担している法人税とは異なり、赤字企業にも納税義務が課されるため、外形標準課税を拡大すると、赤字や利益の少ない企業の税負担が重くなってしまうのです。

これまでのような所得金額とは別に、「付加価値額」や「資本金等の額」といった企業規模を課税の対象に加えて、税金を払う稼ぎのない企業からも取り立てるのですから、厳しい表現をすれば「課税ベースの捏造」といえます。中小企業よりも、従業員数などの多い大企業のほうが納税額は増えるかもしれませんが、「取れるものなら何でも取る」と言わんばかりの理不尽な税制は許されません。