「企業国家」日本の法人税収が伸び悩んでいる
戦後、日本が焼け跡から復活して、世界に冠たる経済大国の地位を獲得できたのは、製造業を中心に、各企業が輸出で収益をあげて貢献したからに他なりません。日本は企業の活躍によって支えられてきた「企業国家」といえるでしょう。
日本の税収構造でも、法人税は所得税とならぶメイン・タックスです。
バブル期の1990年度、税収の総額は60兆1059億円で、2018年度の税収に抜かれるまでは最高の額でした。このときの法人税収は18.4兆円で、全体の31%を占めています。このとき税収のトップは所得税収の26.0兆円で、その構成割合は43%。その前年に導入された消費税収は4.6兆円で、その割合は8%未満にとどまっていました。
ところが、現在は法人税収と消費税収の立場が逆転しているのです。
財務省が2019年7月に発表した2018(平成30)年度の決算概要をみてみると、前述のように税収総額はバブル期を超えて、過去最高の60兆3564億円でした。2017年度から1兆5689億円の増加です。
内訳をみると、トップは所得税の約19.9兆円。これは賃金の伸びや株の売却益が増加したことをうけて前年比で1兆円ふえており、構成比は33%です。
2位は消費税の17兆6809億円で、前年より約0.2兆円増えています。構成割合は29.3%と、導入時と比べると急上昇していることがわかります。
そして基幹税でありながら、消費税の後塵を拝しているのが法人税です。企業の業績が堅調で、税収は前年比0.3兆円増の12兆3180億円です。しかし、その構成割合は20.4%にまで低下しているのです。前年比で増加しているわけですから、企業の業績が悪化しているため、税収が伸びなかったというわけではありません。
法人税収の伸び悩みに反して大企業には優遇税制が
法人税の伸び悩みは、バブル期やリーマン・ショック前と比べると、より鮮明です。
法人税収が最高額を記録したのは1989(平成元)年度の19.0兆円です。1985年度は12.0兆円でしたから、5年で7兆円も増加しています。リーマン・ショックの前後をみても、2003年度の10.1兆円から、2007年度の14.7兆円と、5年で4.6兆円増えています。
ところが2014年度から2018年度の5年をみると、11.0兆円から12.3兆円と、1.3兆円しか増加していません。
2008年度、法人税収は10.0兆円で消費税収に並ばれると、それ以降は一度も消費税収を上回っていないのです。
このように法人税が地盤沈下した理由は、近年の相次ぐ法人税率の引き下げ、政策減税、そして企業活動のグローバル化、企業のアグレッシブなタックス・プランニングの展開です。これらが組み合わさってメイン・タックスの地位が揺らいでいるのです。
このように税制構造が変化しているにもかかわらず、安倍政権は、ありもしないトリクルダウン効果を狙って、大企業の優遇税制を推し進めています。そのための財源として庶民の財布を直撃し、消費意欲を抑制する消費税の税率をアップするのです。このような税制の恣意的な利用を許すことはできません。